ファッション・アイコンと呼ばれる女優は、どの時代においても存在するものだと思う。が、その魅力の「永遠性」となると、極めて限られた人物になるかなぁと思うわけで…
グレース・ケリー。おそらく、彼女の名を耳にしたなら、誰もが納得するであろう。
だが思いの外、女優としてのキャリアより「モナコ公妃」としての日々が、彼女の人生の多くの時を刻んでいた。
その貴重な一コマを現代のクール・ビューティーことニコール・キッドマンが好演し、今年5月に開催されたカンヌ国政映画祭のオープニングを飾った話題作『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』。
本作では、知られざる苦悩と選択に立ち向かう一人の女性として歩んだ道のりのほんの一部を、スクリーンを通じてシェアし、と同時に観客一人一人の人生に置き換えることにより、明日への勇気を与えられる。そんな熱き思いが込められた1作だ。
そしてまたヒロインがまとう日常着から、シャネルのスーツ、エルメスのバッグやスカーフ、そしてカルティエやディオールといった有名メゾンのスーパーリッチなコスチュームまで、まさに「グレースフル」なスタイリングの数々には、女性たちはきっと学ぶべきアイデアが数多く潜んでいることを察知するに違いない。
ここで一つ、付け加えたいトピックが!
ご存じの方もおいでかもしれないが、日本文化に対する関心も高かったグレース・オブ・モナコは、日本を代表するデザイナー、森英恵との交流もあったという。1975年、モナコのホテルで開催したチャリティショーに招かれ、「ハナエモリコレクション」を披露したのだそう。
ちなみに、森英恵と映画の関係も実は深い。
今年60周年を迎える「ハナエモリ」だが、ブランドがスタートする50年代から、200本以上の映画衣装を手掛けた経歴を今改めて、シネマ・ラバーとシェアしたく思った次第だ。
そしてもう1作、間もなく公開になる『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』。
その17歳のヒロイン、ミアが発するひとこと。「人生は、ほんの一瞬で変わってしまう」。
この言葉の重さを実感する、まさに予期せぬアクシデントに見舞われるミア。17年間の日々の中で、すでにいくつもの選択を重ねてきた彼女だが、とりわけ重大な選択を迫られることになる。それは「生と死」という究極の選択。
スクリーンを見つめながら、すっかり「なりきりヒロイン」感情移入な自分に気づく方も多いのでは。一方で、「日々の暮らし方を再考するチャンス!」となる観客も少なくないかも。
そしてまた登場人物それぞれが奏でるクラシック、ロック、パンクほか異なるタイプの音楽が、ストーリーを心情豊かに彩る。
最後に余談ながら、ミア役の女優(クロエ・グレース・モレッツ)の名にもまた、「グレース」という文字を偶然にも!
『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』
10月11日より新宿バルト9、梅田ブルク7ほか全国公開予定。
©2014 Warner Bros. Ent. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rightsReserved.
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中