《アドバンス志向客の需要つかむ・阪急モード㊦》「他にない物」さらに ファッションとのかけ算で

2021/04/11 06:28 更新


 阪急モードは従来の枠を超えた情報発信にも注力し始めた。

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 20年11月下旬、ダンスパフォーマンスやスタイリングコンテスト、各バイヤーによるイベントやMDの紹介など、多様な内容のオンラインフェスタをインスタグラムで配信した。「7000回以上再生されたコンテンツもある」。これを機にフォロワー数は格段に増えたという。モノにとどまらず、音楽やアートなどカテゴリーを広げた提案は、アドバンス志向客が求めているものなのかもしれない。

 コトコトステージ31に2月初旬、飲食店のスーベニアグッズなどを手掛ける「フリング」とイラストレーターのChocomooさん、広島県尾道市のチョコレート工場が協業した限定店「Cho&Co」が登場した。10~16日はバームクーヘンで有名な「クラブハリエ」のシェフとファッションブランド「オールウェイズ・アウト・オブ・ストック」の協業店を設けた。いずれも、異分野の協業で独自商品を販売した。バレンタイン企画も、モードの切り口で「他にない物」を提案した。

 1月の売上高は緊急事態宣言の再発出の影響で前年同期比2ケタ減だったが、2月は好調な立ち上がりという。今後も、クリエイターと職人との協業による独自商品や新ライン業態の開発などで「MDの重層化」と「他にない物」に取り組む。オンラインを活用したアドバンスマーケティング、OMO(オンラインとオフラインの融合)型のイベント開発も進める。

「クラブハリエ」×「オールウェイズ・アウト・オブ・ストック」の期間限定店

民谷啓モードファッション商品統括部GMD

元気になるムーブメントを

 顧客、作り手、売り手、皆が元気になるようなこと、アドバンスマーケットを持続可能にするようなこと。それが今一番やるべきことだ。ファッションとは何かと考えると、トレンドとかブランドの服を着るだけではなく、もともとは生き方、価値観に対して変化や動きを与えるものではないか。服に限らず、そうしたものをファッションと捉えてムーブメント(動き)を生み出していくことが、マーケットを持続可能にすると考える。

 婦人服、紳士服のくくりはあるが、モードというくくりはない。アドバンス志向客に対する衣食住のモード提案。一つの価値観のもとに組み立てた重層的なMDが、一つの業態のように見てもらえている。重層的であることと他にない物の提案に対してファンが付いている。

 従来型の壁を壊して売り場を始めたが、今までは「トレンドやブランド、ここにしかないをいち早く、いわば不特定多数に」という側面があったかもしれない。もう一度、どのように価値提供するべきか考えると、消費者、お客様を塊として捉えるのではなく、「個」としっかりつながり続ける形がまず必要。そのためには、どう作っているのか、何をしようとしているのか。思いやポリシーなど裏側の部分を伝えることが重要だ。

 アドバンス志向客を、クリエイターなどアドバンスであり続けることに貪欲(どんよく)な人々と捉えると、ヒントが得られる。心を動かすモノやコト全てを扱うのが阪急モード。その真ん中にある服に関しても、まだまだ提案が足りていない気がする。

民谷啓モードファッション商品統括部GMD兼モード開発部SBY

(繊研新聞本紙21年2月22日付)



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