《アドバンス志向客の需要つかむ・阪急モード㊤》服、雑貨、カルチャーの重層MD実る

2021/04/10 06:28 更新


 コロナ下でも、阪急うめだ本店3階モードゾーン(阪急モード)が健闘している。阪急本店の全館売上高が前年同期比2ケタ減で推移するなか、阪急モードは1ケタ台の減少にとどまる。国内客に限ると売上高は前年実績を上回り、20年10~12月は12%増と拡大した。オープン時から進化させてきた「重層的MD」が、ターゲットとする刺激と自己表現を強く求める〝アドバンス志向客〟の需要を満たしている。

(吉田勧)

■店頭あってのEC

 阪急モードは16年春、グレードやテイスト、カテゴリーをミックスした〝ワールド〟として開設した。モードの概念を広く捉え、国内外のクリエイターやデザイナー、ストリートブランドまで幅広く揃え、宝飾の「タサキ」や「マルニフラワーカフェ」など服以外も取り込んだのが特徴だ。ブランド集積度と買い回りの高さで、オープン以来売り上げを伸ばし、3年目の18年度売上高(18年4月~19年3月)も13%増だった。コロナ禍の影響を受け始めた19年度は2%減となったが、20年2月までは前年実績を上回っていた。

 20年度も、4~5月の臨時休業後の6~12月は1ケタ台の減収と健闘した。マイナス要因は売上高構成比で約15%を占めていた外国人売上高が皆無となったためで、国内客の売り上げは落としていない。前年に消費増税の反動減があった10月は大幅な伸びとなり、11月、12月も伸ばした。なかでも目立つのが国内ECで、6~12月累計売上高は4倍になり、売上高構成比は約6%に向上した。新たに導入したリモートショッピングサービス「リモオーダー」利用の売上高構成比も「1%近く」となった。店頭売上高は入店客数減の影響を受けているものの、売上高の9割以上を占めるのが店頭。ECやリモオーダーの伸びも店頭の取り組みの成果だ。

■一つの業態に支持

 「一つの価値観のもとに組み立てた服、アクセサリーなどの服飾雑貨、食品の重層的なMDが、一つの業態に見ていただけている」。民谷啓モードファッション商品統括部GMD兼モード開発部SBYは、そう話す。重層的MDのさらなる具現化と「他にない物」の提案として、19年3月に「トムブラウン・チョコレート」「ケンゾーポップ」を開設した。さらに、20年11月の1階でのお披露目を経て「ガラージュ・ヴェントゥーノ」を常設展開している。これらは既存のラインとは違う商材を揃えた新業態で、協業して開発してきたものだ。自主編集売り場「D・ラボ」でのアクセサリーの充実などもあり、「服」の構成比はオープン当初の6~7割から「55%ぐらい」に低下した。「服のみならずライフスタイル全般に重層的に広がった、ここだけの品揃えを幅広い客層の阪急モードファンに購入していただけている」と話す。

「ヌメロ・ヴェントゥーノ」の日本初のコンセプトショップとして常設展開している「ガラージュ・ヴェントゥーノ」

 購買客は、アートやファッション好きなアッパーミドル層。「刺激を求める人、自己表現をしっかりしたい人というのが分かりやすい」。ストリート系ブランドなどでの若い層の購買は少し減少している。一方で、40~60代の大人の女性の購買は「落ちていない」という。「ロエベ」「メゾン・マルジェラ」「セリーヌ」のレザーグッズ、「モンクレール」などが安定しており、品揃えの柱である服も売れている。D・ラボ、「D・エディット」「ジル・サンダー」「アクネ」「MM6」「ノアール・ケイ・ニノミヤ」「エンフォルド」「ルシェルブルー」「ダブルスタンダード・クロージング」などが6~12月で前年実績を上回った。

 服の消費が低調と言われるなか、ライフスタイル全般でのモード提案が服の売り上げに結びついている。

2月初旬コトコトステージ31に開いた独自コンテンツの期間限定店「Cho&Co」

(繊研新聞本紙21年2月19日付)



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