グローバル小売3社、ネット強化へ集中投資

2016/11/23 06:02 更新


《地・トレンド》グローバル大手小売3社の直近四半期

インディテックス好調維持 FR、H&Mも6、7月復調 


 インディテックスの上期(2~7月)、H&Mの第3四半期(15年12月~16年8月)、ファーストリテイリング(FR)の通期(16年8月期)業績が出揃った。直近四半期業績を見ると、インディテックスが増収増益基調と依然好調を維持した。ファーストリテイリング、H&Mは直近四半期に比べ売り上げが回復したものの、収益性にはなお課題が残る結果となった。(柏木均之)

 

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 インディテックスは上期11%増収だった。直近四半期の5~7月だけでも売上高は同水準の伸びで、出店拡大だけでなく、既存店ベースでも増収基調を維持していると見られる。売上高総利益率も50%台半ばを維持し、利益の各段階でも増益で折り返した。

 

H&MとFR8月失速


 ファーストリテイリングは、通期で1ケタ増収、2ケタ減益となったものの、価格見直しを実施した主力の「ユニクロ」の売り上げが下期(3~8月)は増収増益となった。「ジーユー」が通期3割強の増収増益となるなど次世代の柱ブランドも好調に推移している。

 H&Mの第3四半期は増収ながら営業利益、税引き後利益は上期に続き2ケタ減を強いられた。カール・ヨハン・パーションCEO(最高経営責任者)は春物の値引き販売増加に加え、6~8月も「8月半ばまで売れ行きは順調だったが、その後残暑の影響が9月まで続いた」ことを収益性低下の要因に挙げる。

 天候不順が売れ行きにマイナス影響を与えたのはファーストリテイリングも同様だ。国内ユニクロで見ると6、7月は既存店売り上げが前年を上回ったが8月、9月はマイナスだった。決算発表の席上、柳井正会長兼社長は「言い訳になるが、あの温度で売れる方が不思議」と説明している。

 直近四半期だけで見ると、業績の明暗が浮かび上がる。インディテックスが総利益率を維持し、増益を果たしたのに対し、H&Mは営業減益、ファーストリテイリングは「Jブランド」の赤字が営業損益に響いた。ただ、秋冬に比べ収益性の低い夏物商戦を各社とも増収で折り返してはいる。

ネットと実店舗を結ぶ


 インディテックスは第3四半期の最初の月に当たる8月も中旬まで2ケタ増収で推移、下期も順調に収益を拡大できると予想する。第4四半期で増収だったファーストリテイリングも「気温低下とともに(秋冬物の販売は前年実績を)キャッチアップしていく」と見る。

 H&Mも目先の販売が復調していることに加え、「ここ数年、IT(情報技術)と新ブランド開発に投資してきた」とし、一連の投資でネットと実店舗を結ぶ買い物の利便性向上と消費者ニーズ把握の精度が高まれば、「17年以降、収益性を伴った成長に期待が持てる」という。

 IT関連の投資は他の2社も余念がない。上期、新たに11カ国でネット販売を開始し、実店舗とネット双方で販売する市場を39まで拡大したインディテックスは、アプリケーションを自社開発し、9月から本国のスペインで、自社の全ブランドのモバイル決済サービスを開始した。

 ファーストリテイリングも、東京・有明の次世代物流拠点に来春、商品開発と商売の機能のかなりの部分を移すことを表明している。中期的にネット販売比率を30%まで高めるほか、同拠点を軸に消費者のニーズ変化に即応できるサプライチェーン構築にも乗り出す考えだ。

 3社とも、リーズナブルな価格と実店舗の出店拡大だけで今後も成長性が維持できるとは見ていない。グローバルプレイヤーによる、ネットとリアルを融合した買い物環境整備と、消費者にストレスなく商品を届ける機能の強化がさらに加速していきそうだ。

(繊研 2016/10/24 日付 19576 号 3 面)



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