アナログとデジタルで着実に伸ばす!

2016/06/07 11:39 更新


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【販売最前線】オーガニックコットンのアバンティ×EC支援のアラタナ

好きだからもっと広めたい 「密な関係」でギャップ埋める

 オンラインショップを持つことが標準装備となった今。実店舗だけでなく「ECの売り上げをいかに伸ばすか」は多くのブランドに共通する課題となっている。そんな中、上質なオーガニックコットン製品という限定的なアイテムながら、ここ数年、着実にECでも市場を広げているブランドがある。アバンティ(東京)のオリジナル「プリスティン」だ。EC支援会社アラタナ(宮崎)とタッグを組み、密なコミュニケーションで互いの考えのギャップを埋め、デジタルとアナログ両面での販売力を磨いている。(佐々木遥)


■売るだけでなく心を届ける


 独自にECのノウハウを持たないアパレル企業にとって、ECの拡大は容易なことではない。目で確認できる物件とは違い、目では見えないシステムに投資することは時にリスクになりかねず、相性のいいパートナーと組むことは重要だ。アバンティとアラタナはその好例と言える。

 両社が取り組み始めたのは12年。アバンティがECサイトのリニューアルを依頼したのがきっかけだ。ECサイト自体は約15年前に開設していたが、投資の割になかなか自分たちが思い描くようなサイトにならず、ECシステムに対して「疑心暗鬼になっていた」(奥森秀子取締役プリスティン事業部ゼネラルマネージャー)という。

 11年、アバンティは「お客様に寄り添う」政策を掲げる。それまでは百貨店のインショップと卸販売を軸としていたが、並行して路面店戦略とウェブ強化を打ち出した。根底にあるのは「物を作って売るだけでなく、心を届けたい」という思い。「協力してくれる生産者の思いや自分たちがプリスティンを通して伝えたいこと、プリスティンを買うことで世の中がどう変わるのか」をきちんと発信することが必要と考えた。

 そうして知り合いに紹介されたアラタナを訪れ、互いに自社サービスに対する愛が強いことから意気投合。「売れればいい」ではなく、「自社製品が好きだからもっと広めたい」という思いが合致した。アラタナがシステムを構築して12年にサイトのリニューアルを実施、13年からアラタナはウェブマーケティングもサポートしている。13年5月、アラタナはちょうどマーケティング事業をスタートしたところで、プリスティンが最初の取り組み先となった。

 

「プリスティン」のECサイトのトップページ。商品ページが見やすく、20~30代の女性も読みたくなるコンテンツもいっぱい
「プリスティン」のECサイトのトップページ。商品ページが見やすく、20~30代の女性も読みたくなるコンテンツもいっぱい

 

 

■やり取りを通してアイデア


 13年以来、プリスティンのEC売り上げは毎年30~40%増で推移しており、比例して全体の売り上げも伸びている。EC化率は15%で、アラタナとの取り組みは着実に成果を上げている。それを支えているのは、密度の濃いコミュニケーションだ。アラタナECマーケティング事業本部のコンサルティンググループディレクター林田憲志朗さんとアバンティのウェブ担当者は、アラタナ独自の企業間留学制度「クロスターン」を利用して3日間、それぞれの会社で業務に就き、お互いの会社についての理解を深めた。

 

対面のミーティングはほとんどないが、日常的に電話でやり取りをしているため、久しぶりに会ってもスムーズに打ち合わせが進む
対面のミーティングはほとんどないが、日常的に電話でやり取りをしているため、久しぶりに会ってもスムーズに打ち合わせが進む

 

 現在は電話会議を軸とし2日に1回、長い時は1回1時間以上に及ぶ。アラタナ側は林田さんとデザイナーが同席し、売り上げ動向を見ながら、実施した施策の効果や新しい施策について話し合う。そうしたやり取りを通して新しいアイデアが生まれることも多く、「常にコミュニケーションが取れているので、やりたいことを実行するスピードが速く、思っていることと実際のギャップも少ない」(アバンティのウェブチームチーフの内田智子さん)。

 アバンティのウェブチームは現在4人。ECスタート時は1人だったが、リニューアル時に2人になり、少しずつ増やしてきた。とはいえ、元々ウェブに強いメンバーというわけではなく、アラタナと組むことでウェブのノウハウを学んでいる。以前は「何が足りないか分からない状態」だったが、一緒にスケジュールを立てる仕組みを作ったことで、計画的に商品を打ち出し、年間を通して売り上げが取れるようになった。アラタナはコンテンツ作りだけでなく、リピーターを増やすためのメールでのアプローチ方法などのアドバイスも行う。

 ウェブに力を入れた結果、客層も若返った。ブランドを始めてしばらくは60~70代だった中心客層が、ここ数年で35~50歳代となり、ウェブでは20~30代が中心となっている。ただ、ミセス層の客も多いことから、ウェブを見てからの電話での問い合わせも多く、電話でも店舗と変わらない接客ができるよう、ウェブチームのメンバーにも店舗経験を積ませている。「いくらシステムが進化しても、結局人と人とを結びつけるのは心。店頭でもウェブでも心を込めて接客することが大切」(奥森さん)と語る。

■アラタナECマーケティング事業本部マーケティング事業部部長本庄拓郎さんの話 

「伸ばすためにマーケティング」

アラタナ本庄さん


 元々はECサイトの構築に注力していましたが、無料でサイトが作れるサービスなどが登場し、私たちのサービスを選んでもらうにはどうすれば良いかと考え、マーケティング事業を始めました。長く、より良く使ってもらうには売り上げを伸ばす必要があり、そのためにマーケティングが重要になると考えました。スタート時、4人だったマーケティング事業部は現在、30人体制となりました。

 アバンティと取り組むのは、まず「これは売れるな」と感じたことと商品への愛があること、それからお互いに成長していけると思ったからです。正直、広すぎる市場で戦うのは大変ですが、オーガニックコットンというまだ成熟しきれていない市場のパイオニアとして、大きな可能性を持っています。

 


■アバンティ取締役プリスティン事業部ゼネラルマネージャー奥森秀子さんの話

「ウェブと実店できちんと循環」

アバンティ奥森さん

 路面店とウェブはダイレクトに私たちの思いを伝えられるので、お客様に寄り添うことができます。ウェブを強化してから、実店舗ときちんと循環ができるようになりました。例えば、名古屋や福岡でイベントをすると、ウェブでプリスティンを知ってくださった方が大勢来てくださいます。

 実店舗とECはともするとスタッフが対立構造になりがちですが、うちは店舗スタッフも「もっとあの商品のストーリーを伝えた方がいい」など積極的にウェブに対する意見を出してくれます。ウェブをしっかり見てから来店されるお客様が多いので、ECと実店舗、どちらも大切。店舗という観点で見ると、違いはありません。

 物作りのストーリーを無限大に伝えられるという意味では、ウェブの方が情報発信の重要な役割を担っていると感じています。

 ●アバンティ 85年創業。オーガニックコットンの輸入や糸、生地販売を手掛け、96年にオリジナルブランド「プリスティン」をスタート。本社のある新宿と自由ヶ丘、吉祥寺に直営路面店を持つ。現在の百貨店インショップ数は9で、今秋に1、来春に1増える予定。商品はレディスとベビーを中心とし、今夏、初めてのメンズライン「プリスティン・ジェンツ」を始める。全て国内で縫製し、取引している工場数は198。

 東北の被災地を支援する活動や長野県・小諸エコビレッジの運営などソーシャル事業も手掛ける。


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