震災から5年、被災地の若手経営者㊤

2016/03/15 05:41 更新


福島市ラージ 地元に恩返ししたい 

家族で楽しめる大型店開設


 「震災後の未来を担う子供たちが楽しめるショップを開設することで地元に恩返ししたい」と話すラージの高橋義和社長(39)。昨年春、福島市郊外の2300平方㍍超の敷地にファミリー向け大型セレクトショップ「ラージ」を移転オープンした。

 15年前に福島駅の外れの小さな店から始まり、増床改装を経て、7年目に郡山市へ2店目を開いた。埼玉・熊谷に3店目をオープンした数カ月後、東日本大震災に見舞われた。直後は福島店と郡山店が営業できず、自店の商品全てを避難所に支援物資として届けた。

 高橋社長は「今まで地元の人に店を育ててもらった。今度は自分たちが助ける番」と、スタッフと手分けして沿岸部などを回った。一時、福島のスタッフは熊谷店に移住していたが、「1店の売り上げで全社員の給与はまかえない厳しい時期」もあったと振り返る。


家族で楽しめる店

 11年5月に福島店の営業を再開した時、「子供や若い家族が来店しなくなったことが転機になった」。原発事故で県外に避難してしまったためだ。その後、「家族が戻ってきて子供が走り回れるような店を作ろう」と固く決意した。郊外に大型店を移転・開業しようと、熊谷店は閉めた。新しい土地の除染には1000万円以上がかかった。店舗面積約330平方㍍の大型店は、主力のメンズに加え、レディス、キッズまでのカジュアルウエアを揃える。

思い伝わる手応え

 人口減・少子化の状況下でキッズを扱うことにはスタッフの反対が多かった。しかし、メンズだけでは新規客の開拓に限界を感じていた。「東日本大震災によって新たにキッズに挑戦する勇気をもらえた」と高橋社長は話す。オープンから10カ月で、2500人の新規客を獲得し、売り上げも3倍近くに増えた。地元に根差した商売を貫いた成果が出始めている。

「未来を担う子供たちが集える場を提供したい」と話す高橋社長



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