ユネスコ無形文化遺産に登録され、お盆に夜通し踊る徹夜おどりで有名な「郡上おどり」用のアパレルブランド「グジョー・オドリギ・アソシエーション」(オドリギ)が始動した。立ち上げたのは、岐阜県郡上市内のスクリーン印刷企業の若手メンバーで構成する団体「グランド」。きものを表現媒体としてアーティスト活動を続ける高橋理子さんもデザイナーとして参画するなど、盛り上がりを見せている。
(森田雄也)
郡上市は元々、「スクリーン印刷発祥の地」として発展。1950年代からの18年間で「2500人の技術者を輩出した」とする養成所の開所を機に、スクリーン印刷が産業として発展してきたという。現在でも20を超える工房が市内に存在しているものの、職人の高齢化や担い手不足、機械化の流れを受け産業の見直しを迫られている。
市と連携
そんな中、スクリーン印刷企業の若手は業界活性化を図り、22年から郡上市役所市長公室政策推進課による関係人口創出事業「郡上藩蔵屋敷」と連携し、印刷の歴史やプロセス、企業などを紹介するパネル展示のほか、工房ツアーを開催してきた。若手の交流が進む中で、「有名な祭りは決まったコスチュームがあるケースが多いが、郡上おどりは決まったウェアがない」という話題が浮上。そこで、踊る際に着るブランドの立ち上げに向けて動き出した。上村考版、スナップ・スクリーン、旗将の地元スクリーン企業3社の若手が発起人となり、次世代スクリーン印刷業界の発展を目指す団体、グランドが23年11月に発足した。
企画には地元スクリーン印刷会社のデザイナーに加え、アーティストの高橋理子さんも参画した。高橋さんは独創的なきものやゆかたブランド「ヒロコレッジ」を展開するほか、「アディダス」「イケア」といったグローバルブランドと協業した実績も持つ。東京芸大時代にスクリーン印刷を使った制作を行っていたほか、今も郡上市の専門店と取引があり、昨年の工房ツアーにも参加するなど郡上市とのつながりが深い。
アイテムは高橋さんがヒロコレッジで展開する「テイ」「フォーシャツ」シリーズを踊りに適したデザインやパターンにアップデートしたトップやパンツのほか、たつけや半纏(はんてん)、オドリTシャツなど九つ。ユニセックスで、基本的オリジナルグラフィックを郡上市でスクリーンプリントし、縫製まで行う。
ECも
8月に行った披露イベントではグラフィックTシャツ(税込み4500円)を先行販売。さらに、高橋さん含め3人のデザイナー、郡上おどりや地域に関する衣装リサーチャーによるトークイベントを開き、インスタライブで配信しにぎわいを見せた。
今後はブランドECサイトを立ち上げるほか、郡上八幡町屋敷越前屋での対面販売も計画する。また、盆踊りシーズンの需要を見込んでおり、25年春夏以降もブランディングとして、高橋さん含め様々なアーティストと協業していく。