G7貿易大臣会合で「強制労働」対策の初の共同声明 経産省、企業の人権対策に関する横断チーム新設へ

2021/10/23 11:20 更新


 10月22日にG7貿易大臣会合が開かれ、G7として初めて、サプライチェーンでの強制労働に関する共同声明が採択された。会合に出席した経済産業省の萩生田光一大臣は、「企業の人権に関連した施策について検討する横断的なチームを省内に立ち上げる」方針を明らかにした。

(有井学)

 チームの「枠組み、詳細は未定」(経産省通商政策局)だが、7月1日に通商政策局内に新設したビジネス・人権政策調整室を軸に据える。同室で現在集計している国内企業の人権に関する取り組みの調査結果などをもとに、「今後の政策を検討する」という。

 強制労働に関する声明は議論全体をまとめた閣僚声明の付属文書として、デジタル貿易とともに採択された。デジタル貿易に関しての採択もG7では初。

 会合で、萩生田経産相は「サプライチェーンにおける人権侵害、強制労働の排除に向けて、G7・同志国が連携することが必要」とした上で、「企業が公平な競争条件の下で積極的に取り組める環境を整備することが不可欠。そのため、各国の措置について予見可能性・透明性を高める国際協調・仕組み作りが重要」と発言した。

 共同声明にはこの発言も踏まえ、「全ての国、多国間機関、ビジネスに対し、人権と国際労働基準を堅持し、責任ある企業行動についての関連原則を尊重するよう要求する」ことや「OECD(経済協力開発機構)の多国籍企業行動指針や責任ある企業行動のためのデュー・ディリジェンス・ガイダンスなどに沿って、人権デュー・ディリジェンスに関するガイダンスを促進する」「(強制労働の排除に向けた)各国の国内的手段と多国間機関を通じた協働を継続する」ことなどが盛り込まれた。

 サプライチェーンの労働者の人権問題は衣料品を含め、「70年代からある課題」(経産省)。国連など国際機関や日本のファッションビジネス業界を含む各企業も対策を強化してきた。今回の共同声明は6月のG7首脳会合で合意した方針に沿ったもの。対外政策で人権問題を重視する米国政府の姿勢と中国新疆ウイグル自治区の衣料品工場などの強制労働が国際問題に浮上したことも背景と見られる。



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