桐生のフクル マスカスタマイゼーションの服作りへ

2018/03/30 10:58 更新


 婦人服製造販売のスタートアップ、フクル(群馬県桐生市、木島広社長)がマスカスタマイゼーションの服作りを進めている。テクノロジーの活用で製造コストを抑え、ECや実店舗を通じてパターンオーダーを広げながら、長期目線でビジネスモデルを確立させる。

(中村恵生)

“オーダーはクール”5年先見据えて

 代表の木島さんはコムデギャルソンで「ジュンヤワタナベ」のチーフパタンナー、イオントップバリュでチーフクリエイティブデザイナーを務めた後、故郷の桐生で起業。桐生では家業の縫製工場を木島さんの兄が継承しており、縫製ラインの活用も考えたビジネスを検討し、オリジナル抱っこひも「ハギーハギー」がヒットした。それを元手に15年に設立したのがフクルだ。

 「高度化されたシステムを使えば、百貨店価格でオーダーメイドが可能なのでは」という考えからビジネスを構想。通常のオーダーなら、パタンナーや生産管理に人手がかかるが、これをシステムを使って省人化することを目指した。

 現在、販売しているのはレディスのセミオーダーで、ドレスやワンピースの「ルコリエデベルール」とスーツの「ソーウィル」の2ブランド。価格はワンピースが3万円前後から、スーツが5万円前後からと百貨店既製服の価格帯と変わらない。

ワンピースやスーツを販売。既製服並みの価格でパターンオーダーを提案する

 客は好みの既製服見本を選んで生地やサイズを選択。受注と同時に自動でCAD(コンピューターによる設計)データに落とし込み、使用する生地、芯地、ボタンなどの付属まで在庫情報と直結して管理し、欠品すれば自動発注まで行える仕組みを構築中。こういった事業モデルが評価され、昨年には経済産業省主催の「IoT(モノのインターネット)ラボセレクション」のファイナリストにも選ばれた。

 自社ECのほか、実店舗でも高島屋新宿店、三越日本橋本店で受注し、4~6週間で仮縫い納品し、修正があれば追加2週間で完成品を納品する。生地は桐生の機屋で眠る残反を活用、生地を預かって受注時点で決済する仕組み。縫製は実家や数カ所の中小工場、職人と組んだ。

 「ファストファッションが広がった一方、オーダーの価値も上がっている。オーダーは在庫レスで環境への負荷も抑えられる。〝オーダーはクール〟という文化が根付けば、マスカスタマイゼーションの時代が来る」と5年先を見据えながら、ステージに応じて仕組みを整える。

「オーダーという文化を広めていきたい」と話す木島広さん


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