織物産業に集う若者たちに明るい未来を 山梨で企画展

2020/03/13 06:29 更新


 織物産業に興味を持ってくれた若者たちに明るい未来を――富士吉田織物協同組合は29日まで、山梨県富士吉田市のFUJIHIMUROで企画展「織り機につどう」を開いている。織物産業を縁の下で支える準備工程に光を当て、未来の担い手を募り、育成したい考えだ。

 織物は、糸を染めて織る前に準備工程といわれる仕事がたくさんあり、その一つひとつに専門の職人が存在する。例えば、糸を織りやすくするために糊を付ける糊付けや、経糸を織機に通す経通しなどだ。織物の品質を左右する大切な仕事だが、近年は職人の高齢化が進み、「山梨では最も差し迫った課題」となっている。

 今回は「機屋番匠」の仕事を紹介する。織機の解体構築や、修理・メンテナンスを行う機械工だ。山梨では「請け負っている人は2人だけ、いずれも70歳を超えている」といい、存続の危機にさらされている。

 「仕事を継承していくには、仕事を学ぶ気持ちを持った人と学ぶ機会が必要」とし、展示会では、機屋番匠が監修のもと、織機の解体や構築が体験できる場を作った。実際に「機屋番匠に興味を持つ若者や、学ぶ機会があるなら参加したいと考えている工場の職人が出てきている」という。展示会を通じて広く発信することで、さらに関心を喚起したい考えだ。

 ギャラリースペースの中に2台の織機を設置し、1台は織機を使ったインスタレーションに、もう1台は織物メーカーへの就職を考えている若者や織機の構造を改めて勉強したい織物メーカーに向けたデモンストレーションに使用する。デモンストレーションへの参加は地域の事業者限定だが、見学は自由。インスタレーションは織機の記憶をテーマに、躯体(くたい)や織機のパーツを再構成した。見えない作り手と受け取り手のつながりを円のモチーフに宿し「織り機のみる走馬灯」を表現した。

織機のパーツなどで作ったインスタレーション

 このほか、準備工程に使われる機械も数種運び入れ、触れたり、作業を体験できるワークショップを開く。織機のパーツを使ったアート作品の販売や映像作品の上映も行い、様々な観点から織物の仕事とそこに集まった人々を紹介する。

 企画したのは「装いの庭」の藤枝大裕さん。山梨県の郡内地域を中心に、繊維に関するイベントの企画と運営を行っており、今勢いのあるマーケットイベントの一つ「ハタオリマチフェスティバル」の展示企画も担当している。

 開催資金を調達するため、クラウドファンディングも実施。返礼品は、織機のパーツを使ったアート作品、国内外のハイブランドに採用されている工場の端切れを使ったコースター、パンチカード(織り柄を作るために織機の糸の上げ下ろしを制御する厚紙)を活用したバラのアート作品などを揃えた。

 企画展の入場は無料。開館時間は午前10時から午後5時。休館日は火、水、木。

織機やそのパーツに実際に触れることができる部屋も
職人のインタビューや仕事風景を写真や映像で


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