【ファッションとサステイナビリティー】商業施設で再エネの導入・拡大相次ぐ カーボンニュートラル実現目指す

2021/04/26 06:00 更新


 政府が50年の目標に掲げたカーボンニュートラル(二酸化炭素=CO2の排出量と吸収量を合わせてゼロにする状態)の達成に向けて、商業施設の取り組みが活発だ。中でも、CO2を排出しない再生可能エネルギー(再エネ)の利用を開始・拡大する施設が増えてきた。多くが供給事業者とアライアンスを組んで安定供給体制を整備、自社発電機能を生かす大手不動産ディベロッパーもある。脱炭素をはじめとしたサステイナビリティー(持続可能性)への取り組みは商業施設にとって、必要不可欠となった。

 ルミネは東京ガスとカーボンニュートラル都市ガスの供給に関する基本合意書を締結し、3月2日にルミネ大宮で導入を開始した。「SC業界初の取り組み」(同社)という。

 JR東日本グループが20年5月に公表した50年度のカーボンニュートラルを目指す「ゼロカーボン・チャレンジ2050」の一環。ルミネ大宮では空調や給湯などで使用するガスとして年間約17万立方メートルを供給、年間約500トンのCO2削減効果を見込む。今後3年間で、さらに6施設で同ガスを導入し、計7施設で年間約130万立方メートルの供給を目指す。併せて、ルミネと東京ガスを含む15社は3月9日にカーボンニュートラルLNG(CNL)バイヤーズアライアンスを設立した。「持続可能な社会の実現に向け、CNLを調達する東京ガスと購入する企業が一体となって、CNLの普及拡大と利用価値向上に取り組む」方針だ。

 大手流通業のほぼ全てがESG(環境・社会・ガバナンス)経営を重点に据えており、再エネの活用に積極的だ。

 丸井グループは事業活動で消費する電力を100%再エネで調達することを目標に掲げる企業が参加する国際的イニシアチブ「RE100」に18年7月に加盟。新電力ベンチャーのみんな電力(東京、大石英司代表)によるブロックチェーン技術を用いた電力供給元の可視化サービス「エネクトRE100プラン」に参画するなどして、30年までに事業活動での消費電力の100%再エネ化を目指す。

 イオンモールは25年までに国内約150施設で使用する電力全ての再エネ化を目指す。昨年12月にオープンしたイオンモール上尾では再エネで発電された電気の環境価値を証書の形で売買可能にした「非化石証書」を活用し、実質的に使用電力の100%再エネ化を実践している。同社は50年までに全施設で排出するCO2を総量でゼロにする方針も掲げる。

 セブン&アイグループは19年5月に環境宣言「グリーン・チャレンジ2050」を策定、店舗運営に伴うCO2排出量を50年度までに実質ゼロにする目標を掲げた。その具体的の一つとして、SCのアリオ市原で、自然エネルギー関連事業のネクストエナジーグループによる「国内商業施設最大級」の自家消費型太陽光発電設備を昨年7月に導入した。

 高島屋グループの東神開発も一部SCなどで使用電力の100%再エネ化を開始した。昨年11月に玉川高島屋ショッピングセンター別館のマロニエコート、アイビーズプレイス、花みず木コートと周辺の柳小路エリアで運営する4棟、流山おおたかの森SC周辺施設(NAGAREYAMAおおたかの森GARDENSハナミズキテラス)で、NTTファシリティーズが販売する100%実質再エネ由来の電力に切り替えた。今年3月31日にオープンした流山おおたかの森SCフラップスでも全て再エネ由来電力とし、その後に開業する同SCの新館などにも使用する計画だ。高島屋は19年9月にRE100に加盟、グループとして50年までに事業活動で使用する電力全ての再エネ化を目標に掲げている。

東神開発は一部SCで100%再エネ由来電力化を進めている(3月31日に開業した流山おおたかの森SCフラップス)

 SCや大型複合施設を運営する大手総合不動産ディベロッパーも再エネの活用に力を入れている。 

 東急不動産は14年に太陽光発電や風力発電などの再エネ発電事業を開始、19年にRE100に「不動産業では初めて」加盟した。今年2月にその達成目標時期を当初の50年から25年に前倒しすることを発表した。21年度に約7%、22年度に約60%の施設の電力を再エネに切り替え、25年には商業施設を含む同社所有全施設の電力を全て再エネ化する。これにより、「年間約21万トンのCO2が削減される」という。

 同社の再エネ発電施設は建設中を含めて2月時点で53件で、合計定格容量は原子力発電所1基分に相当する1000メガワットを超え、「再エネの発電事業者として国内有数の規模」となった。この自家発電機能を活用すれば、「目標を大幅に前倒しできる」と判断した。

 三井不動産は昨年12月、グループ全体の温室効果ガスの排出量を19年度に比べて30年度までに30%削減し、50年度までに実質ゼロとする目標を発表した。これまでも同社が保有する太陽光発電所などからの商業施設などへの供給を強化しており、これらの取り組みを促進する。目標の発表と同時に、東京電力エナジーパートナーと「オフィスビルなどにおける使用電力のグリーン化に関する包括協定」を結んだ。22年8月に東京・八重洲に完工予定の大型複合施設「東京ミッドタウン八重洲」では同社保有の全5カ所の太陽光発電所の環境価値を「トラッキング付非化石証書」として付加し、オフィステナント企業などにグリーン電力として供給するサービスを実施する。

 再エネは一般に通常エネルギーに比べてコストが高いのが課題とされる。その中で、各社は供給事業者や他企業とのアライアンスや自社発電機能の強化などで課題解決を目指す。

(繊研新聞本紙21年4月23日付)

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