タイルカーペットの水平循環リサイクルの普及促進を目的に、日本リサイクルカーペット協会が23年11月に発足した。当初40社だった加盟企業は90社に拡大し、協会が認定する「リサイクルカーペット」もバリエーションが広がり、ユーザーの要望に応じた幅広い提案を可能にしている。環境配慮を実態以上に見せかけるグリーンウォッシュに対応するため「グリーンチェック委員会」を第3者の有識者で組織し、チェック体制を整えた。現在、タイルカーペットのリサイクル率は20%。これを将来的に50%に高めたいとしている。
日本リサイクルカーペット協会によると、タイルカーペットの生産量は年間2500万平方メートル、市場規模は700億円。使用済みカーペットは廃棄され、多くは埋め立て処分されている。カーペットからカーペットへの水平循環リサイクルが進めば、埋め立て量が減り、化石燃料由来の原料使用を削減することができる。
協会が取り組むリサイクルの仕組みは次の通りだ。タイルカーペットは表面の繊維層(ナイロンなど)と裏面のバッキング層(PVC=ポリ塩化ビニル)を貼り合わせている。オフィスビルの改修や解体などで廃棄される使用済みのタイルカーペットを回収し、カーペットの二つの層をはがす。分離したバッキング層を再生、リサイクルカーペットのバッキング層の原料としてカーペットメーカーに供給する。リサイクルされたタイルカーペットはメーカーから商社、卸などを経て、オフィスなどの床材に使用される。その後、事務所の改装やビルの解体に伴い、廃棄されたカーペットは再び回収され、リサイクルカーペットによみがえる。

この方式のポイントは、貼り合わされた二つの層をいかにきれいに分離できるかだ。不純物が混入すれば再生樹脂の品質が悪化し、リサイクルが繰り返せない。バッキング層の再生技術もさることながら、分離技術の確立も大きい。02年にリファインバースグループが実証プラントを稼働し、破棄されたタイルカーペットを収集し、分離・再生する技術を確立させている。この20年、リサイクルカーペットに取り組む企業が増え、市場での認知を高めてきた。


オフィスビルのディベロッパーなどもGHG(温室効果ガス)削減や資源保護の観点からリサイクルカーペットに着目しており、需要は急増している。同協会では、環境対応商品に対する市場ニーズが高まり、様々なリサイクルカーペットが市販されることが見込まれるため、統一された規格として「リサイクルカーペット認定」制度を設けた。市場に流通するリサイクルカーペットの再生素材の品質を担保することが狙い。品質が一定の水準を維持することで、繰り返しリサイクルが可能になるとともに、メーカーを問わず回収・再生・再利用が可能となる。
協会が24年7月に開始したリサイクルカーペットの認定基準は4点。
- タイルカーペット由来のPCR(ポスト・コンシューマー・リサイクル=市場で使用済みの製品の回収・再資源化)材を25%以上使用している
- 製品にCFP(カーボンフットプリント=商品の原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量)が明記されている
- 素材ごとに分離された原料を使用している
- 日本リサイクルカーペット協会によるグリーンウォッシュチェックを毎年実施する
この4点を満たした製品を、リサイクルカーペットとして認定し、認定マークを発行する。昨年12月時点で認定商品は111柄655アイテムとなり、ユーザーの選択肢は広がった。価格もバージン原料を使用したカーペットとほぼ同等だ。
グリーンチェック委員会による監査もリサイクルカーペット認定の重要な要素。利害関係のない第3者による委員会を立ち上げた。伊藤耕三東京大学特別教授、豊泉匡範トーマツ公認会計士、吉井一浩アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士の3人を中心に構成、データの整合性を確認し、認定商品の適格性を担保する。
グリーンウォッシュを排除し、リサイクルカーペットの品質を保証することで、ユーザーの安心と信頼を獲得。流通量を拡大し、サステイナビリティ―の進展に貢献する狙いだ。
日本リサイクルカーペット協会近藤忠雄会長 今後も国内外へ発信

リサイクルカーペットの普及をさらに進めるため各社が連携して23年に協会が発足しました。タイルカーペットのブランドメーカーだけでなく、産業廃棄物に携わっている企業などリサイクルに関わる様々な業種も加わり、2次元的、3次元的につながっていることが協会の特徴です。
協会として認定基準を制定し、同時にグリーンウォッシュを排除する仕組みを整えたことで、安心して採用していただける環境が整いました。
協会の活動は英文でもリリースしており、米最大手の業界専門誌に取り上げられ、業界の国際見本市でも高く評価されるなど世界的に注目されるようになりました。今後も国内外への発信を強め、リサイクルカーペットの普及に取り組みます。
(繊研新聞本紙25年3月31日付)