気候変動課題の解決や脱炭素社会の実現など、「環境経営」を本格化し始めたワコールホールディングス。コーポレートコミュニケーション部で、サステイナビリティー推進担当を担うのは中堅女性社員の2人。アパレル業界で先行例の無い取り組みに挑戦する上での思いや課題を聞いた。
谷 担当になった時、正直「えらいことになった」というのが本音でした。気候変動と言っても、そう身近に感じていたわけではありません。日本全体が本格的に動き始めたばかり。実際に始めてみると、様々な情報が日々変わることにも戸惑いました。
山本 とにかく用語に英語が多いので、覚えるだけでも大変です。一つ調べると、また次々と新しい用語が出てきたり…。情報発信を続けるなかで、自身の勉強はもちろん、社内の認識が着実に変わってきたことを感じています。
谷 こうした取り組みは到底担当者だけではできません。この間のコロナ禍のなかで、社内各部が大変な状況。情報提供をお願いしても、時に「こんな時に余計な業務を…」と言われることも。説明、連絡を繰り返して理解と協力を仰ぐことが続きました。
山本 CO2(二酸化炭素)って目に見えないでしょう。年間排出量34万トンと言われてもピンと来ないのが普通です。最初は経営陣から、その重要性を理解してもらうことからスタート。日を追うにつれて、経営の根幹に位置付ける問題だという共通認識が生まれてきました。
谷 年齢によって環境問題に対する受け止め方が随分違うということも痛感しました。私たちの世代は、小学校から教科書で「オゾン層の破壊」を学びますし、ゴミの分別収集も当たり前。Z世代になれば、環境対応は当然のことになり、企業や社会が大きく変わっていくと思います。
山本 ワコールも平均年齢が43歳、50代以上が35%です。環境問題に対する温度差を埋めていき、今後の経営に生かしていくには、まだ時間が必要ですね。
谷 多くの会社に共通することでしょうが、やはり上の世代は過去の成功体験がありますから…。環境問題だけでなく、SNSやウェブなどを含め、経営環境や時代の変化に対して、敏感に反応していくことがますます求められます。幸い、当社は創業時から文化やスポーツを含めて社会に対する貢献という考えが根付いており、様々な情報も蓄積されています。一朝一夕には作れない大きな財産であり、環境経営へと大きく舵を切れた要因の一つです。
山本 これからは環境問題をはじめ、社会貢献が企業の評価、業績に直結していくでしょう。ワコールも様々な社会貢献活動を続けてきましたが、今後は社会貢献が収益の両立に直接つながっていくという意識を今一度しっかり持たねばいけません。
(繊研新聞本紙21年11月26日付)