「サステナビリティ経営」を掲げるTSIホールディングスは、環境や人権、社会への配慮を企業活動の軸に、幅広い取り組みを進める。アパレル事業に伴う環境負荷の低減活動を端緒に、パイナップルなど果物の残渣(ざんさ)を利用した天然繊維やインドでの有機栽培綿の利用を視野に相手先に資本参加し、ただ仕入れるだけから一歩踏み込んで協働する。トップの強いコミットメントの下、全社への啓発活動も着実に進めている。
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昨年6月に経営がサステイナビリティー方針を定め、下期から社員研修を始めました。大小入れるとこれまで5、6回ほど開催。当初はあまり意味合いを理解出来ず参加した社員もいましたが、今では自分の仕事に置き換えて考える参加者が徐々に増えてきました。活動に奇手妙手はありませんから地道な継続が大切です。
21年秋に開設したSDGs推進室もそうですが、トップ(下地毅社長)が強い関心を持っているのが推進力。アパレルの事業活動に伴う負の側面、無駄の排除から始めましたが、さらに環境に配慮した新しい素材の採用を視野に入れ、相手先企業と資本・業務提携にまで踏み込んでいます。
23年1月にはフードリボン(沖縄県国頭郡)、24年1月にはシンコムアグリテック(茨城県つくば市)とそれぞれ契約を結びました。前者はバナナやパイナップルの残渣から天然繊維を作っており、後者は環境と人権に配慮した有機栽培綿の開発プロジェクトをインドで進めています。
有機栽培綿は今期が3回目の栽培ですが、まだ試験段階。今回は契約農家を増やしてさらに研究を深めます。白度や繊維長などいくつかの決め事はこなせていますが、安定的な収穫量など量産化に向けてはまだ課題がある。自社ブランドへの採用にはもう少し時間がかかりそうです。
それでも、単に環境に配慮した素材を取引先から仕入れるのではなく、協働することでトレーサビリティーへの理解を含め、社内の環境意識の高まりが期待できます。簡単には進まない取り組みですが、新しい挑戦としてトップがその意味を繰り返し、社内のムードを高めています。
昨年から各ブランドに対して低炭素素材への切り替えを推奨してきました。今期からは達成目標を決め、部門長以上の人事評価に反映する仕組みも取り入れました。
「マーガレット・ハウエル」や「アンドワンダー」など、もともとサステイナブルな考えを備えているブランドだけでなく、全社横断で取り組みを推し進めるためです。他社の事情は詳しくは知りませんが、ここまで踏み込むのは珍しいのではないでしょうか。
(繊研新聞本紙24年9月30日付)