【ファッションとサステイナビリティー】ケンイチロウ・コヤマ・クリエイティブ・プロデュース・オフィス代表 小山健一郎氏 事業はすべて社会課題の解決

2022/02/25 05:29 更新


 アパレル販売員からグローバルブランドのビジュアルマーチャンダイザー、工務店勤務を経て独立した小山健一郎さんは、19年9月に地元大阪を離れ、沖縄本島の最北端、国頭村(国頭郡)に拠点を移した。野性味あふれる自然が魅力だが、一方で社会課題も多い。閉業したホテルのリノベーションやかりゆしウェア(以下、かりゆし)のアップサイクルなど様々な取り組みを移住先で進める。「事業は全て社会課題の解決」と小山さんは話し、文化と絡めながら情報発信している。

 大阪で働いている時に国頭出身の女性と出会い結婚したこともあって、暇をみては国頭に通っていました。自然にほれ込んだのですが、一方で解決すべき地域社会の問題も気になっていました。移住を決めて最初に取り組んだのが、廃業したホテルの再興。地域では45年ぐらい営業していたホテルを負債ごと買い取るための金融機関との融資交渉に1年、内外観のリノベーションに半年をかけて19年6月に「ヤンバル・ホステル」としてオープンしました。工務店で働きながら独学で空間デザインを学びましたから、リノベーションは自分でやりました。

 次に手掛けたのが、かりゆしのアップサイクルです。県人男性なら1着ぐらいは持っていますが、実際に着用している人はさほど多くない。聞くと、たんすの肥やしになっている例が少なくないようでした。だったらと、不用になったかりゆしを集めて、別の物に変えるプロジェクトを始めました。まずはショッピングモールなどで着なくなったかりゆしを3000着ほどを集め、県内の縫製工場で細く裁断し、色柄をうまく組み合わせてスーツに仕上げました。「オキナワ・スーツ」と名付けましたが、生地は薄いので、実際はシャツジャケットとパンツの組み合わせですね。でも、ゴミ同然のものが、晴れ着であるスーツにするのに意味があると思っています。

 かりゆし文化は沖縄では大切なので、今後はワンピースや短パン、テーブルクロスなど横に広げていきたいですね。でも、僕は小売りをやりたいわけではなく、物を媒介にコミュニケーションしたいだけ。商品を通じて、社会問題や文化を理解してもらうのが狙いなんです。

 オキナワ・スーツが評判を呼び、今度は披露宴など祝いの場にも着ていけるタキシードが欲しいという声をもらいました。ならば、と県内だけでなく東京の生地屋さんに眠っている廃棄予定のテキスタイルから適したものを選んで受注販売することにしました。

 地元の食堂と一緒に捨てられる魚の部位でパスタ料理を提供したり、安価で1カ月ホステルに泊まってもらい、村の人々や自然に触れ合うことで自分を見つめ直す「自分発明企画」なども行いました。これらのイベント全てが僕らが取り組むSDGs(持続可能な開発目標)です。国頭への移住者や滞在者も増えればいいなと思っています。

小山健一郎氏

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