ファーストリテイリングは「サステナビリティレポート2021」を発表した。06年から発行しているが、21年版では柳井正会長兼社長が経済学者で思想家のジャック・アタリ氏と対談した内容や、環境問題に取り組む様々な人物にもインタビュー、自社の取り組みについてもより分かりやすい内容を目指し、翻訳言語も増やした。企業にとってのサステイナビリティー(持続可能性)の重要性について柳井会長が語った。
新型コロナウイルスの感染拡大で世界の状況が一変しました。グローバルな人の往来が止まり、各国の経済は停滞し、大国間で政治的、経済的対立が激化、それらがビジネスにも深刻な影響を与えている。まさに危機的な現状だと思います。
レポートで対談したジャック・アタリさんは、「現在、地球上で起きている問題は一国レベルでは解決できない。国を超えて全世界に住む人が自分の問題だと捉え、悲観せず、ポジティブに行動すべき」だとおっしゃっています。
残念ながら現状は、今のこと、目先のこと、それも利害だけ考えて全員が行動し、殻に閉じこもっている。世界とつながっているのにつながっていないふりをしている。非常に残念です。このままでは地球は今の世代で終わりになってしまうかもしれないと私は考えています。
このような状況でもっとも必要なことは、全世界の人々、企業が人類全体の将来を考えて、経済活動はどうあるべきか、地球環境はどうあるべきか、自社のビジネスはどうか、真剣に考え、行動することです。力を合わせてピンチをチャンスに変え、より良い社会を実現することが大事だと考えます。
当社の企業としての決意を広く世界に発信し、知ってもらうために、今回、レポートを大幅に刷新しました。平和で安定した豊かな社会がない限り、企業の繁栄はありえません。今やサステイナブルであることが、すべての前提であると思います。社会をより良くする会社になるために、我々は本気で行動します。
我々は、地球そのものが有限だということをもう一度自覚しなければいけない。世界各国が別々に行動するのではなく、力を合わせてこのパンデミック(世界的大流行)を早く終息させ、地球環境にプラスになることを、できることから積極的にやっていくべきです。
企業活動自体が社会にとって、プラスになるよう、行動すべきだと考えています。ファッション産業は、これまでかけてきた地球環境に対する負荷を、できるだけ少なくしていかないといけない。今年買って、翌年も着られて、来年買う服にも合う、長く愛用できる服を作る姿勢が必要だとも思います。繊維産業、小売業が一体となってそういう活動が多くなるように考えないといけません。
(繊研新聞本紙21年3月31日付)