増見哲「ei-to」プロデューサー 渡邉昌行さん ファッションの力で課題解決を【ファッションとサステイナビリティー】

2025/04/28 05:29 更新


増見哲が運営する「ei-to」の渡邉昌行プロデューサー

 副資材卸の増見哲(大阪市)が廃校を再利用し、一昨年に開業した複合施設「ei-to」(エイト、兵庫県淡路市)。伝統技術の継承や衣服を取り巻く環境問題、地域活性化などの様々な課題に焦点を当てた施設。ファッションというフィルターを通すことにより、消費者が手に取りやすく体験しやすいモノやコトに変える工夫を凝らす。それが課題を知る、考えるきっかけになれば、という思いを込めた。その上でエイトをブランドとしても、事業としても確立し、「廃校を利活用する新しいモデルになり、地方創生の旗頭になる」(増見喜一朗社長)ことを目標に挑戦を続けている。

 エイトは増見哲がサステイナビリティーをテーマに掲げ、23年12月に開業しました。増見哲の創業者で、増見社長の祖父である増見鉄男氏の母校だった旧江井小学校(17年に廃校)を再利用した施設です。

 施設内はオリジナル割烹(かっぽう)着「カポック」や、淡路島のデザイナー、あまづつみ・まなみさんによる藍衣ブランド「萌蘖」(ほうげつ)、リサイクルのアートランプやアートフラワーなどを扱うショップやギャラリー、古着屋、カフェを運営しています。ミシンや多機能加工「カバロス」、シルクスクリーンなどの設備を置いた工房も備え、様々なワークショップに活用しています。

 エイトは事業採算という観点では十分とは言えませんし、継続するために収益はもちろん大切です。ただし、事業を通して社会にしっかり貢献することが前提です。様々な社会課題に真面目に向き合いながら、課題の解決に貢献できるようなことをファッションという切り口でちゃんと形にして、世の中に提案できればいいなと考えています。

 例えば、服の大量生産・大量廃棄が繊維業界の課題になっています。とはいえ、安価なファストファッションが主に若い世代のワードローブとして定着している。僕たちはファストファッションだけじゃなくて、日本の伝統技術を活用した服や、自分でカスタムした服などに触れてもらい、愛着を持って、長く大切に着続けるというファッションの楽しみ方もあるということも伝えたいですね。

 日本は素晴らしい物作りの国。伝統技術も含めてユニークな技術がたくさんあります。それも僕たちが今の感覚でファッションとしてかっこよく見せ、多くの人たちに広げていきたい。そのために優れた技術を持ち、頑張っている様々な作り手の人たちと一緒に面白いことをしていきたいと考えています。

 教育の観点でもエイトに関心を持ってもらっています。このほど、大阪成蹊短期大学・生活デザイン学科の新入生約70人を受け入れ、藍染めやシルクスクリーンプリントなどのワークショップを実施しました。エイトとしては新しいケースなので、これをきっかけに他の学校にも広がればいいなと思っています。

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(繊研新聞本紙25年4月28日付)

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