【ファッションとサステイナビリティー】ACE代表 岩附由香氏 コロナ禍が児童労働招く懸念

2020/06/27 06:29 更新


 世界から児童労働をなくすために活動するNPO(非営利組織)のACE。新型コロナウイルスで支援活動をする国にも大きな影響が出ている。感染拡大が、児童労働やファッションのサプライチェーンにどう影響しているかを聞いた。

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 児童労働は近年、減少傾向にあったのですが、コロナ禍で増えてしまうことを危惧(きぐ)しています。ACEがプロジェクトを実施しているインドで5月にヒアリングをしたところ、収入が減少し、食べ物の入手にも困っているとの声がありました。家計が苦しく、借金を返すために子供を働かせるという選択を取りやすい状況になっています。インドだけでなく世界中で起こりうることです。グローバルな枠組みの「アライアンス8・7」は、子供たちが学校へ戻れるよう、苦しい家庭への社会保障や現金支給を政府に求めるステートメントを出しています。

 6月の「児童労働反対世界デー」では、ノーベル平和賞を受賞したカイラシュ・サティヤルティさんが、「コロナはウエイクアップコール(警鐘)だ。今とる選択が次世代を決める。子供に予算を使わないのは〝フェアシェア〟(正当な割り当て)ではない」と話していました。

 コロナ禍はNGO(非政府組織)の活動にも影響があります。ACEは現地のパートナー団体と一緒に活動をしていますが、現地で直接支援をしているNGOは活動が制限されます。活動資金が厳しい団体もあります。ACEはいま、クラウドファンディングを実施しています。世界中が大変な中でそれどころではないと思われるか心配もありますが、「活動を続けてください」と予想以上の反応が届いています。

 コロナにより縫製工場の労働者の状況も厳しくなっています。

 ILO(国際労働機関)やIOE(国際雇用者機構)、インダストリオール・グローバルユニオン、ITUC(国際労働組合連合)、ブランド各社などが参加し、コロナの脅威に取り組み、危機後にはより回復力の高い産業を目指すための世界的な行動の呼びかけ(コール・トゥ・アクション)がありました。こうしたアクションを4月という早い段階で繊維産業がとっていることは大事なことです。

 ACEはコットン畑の児童労働問題に取り組んでいます。繊維産業は児童労働やCSR(企業の社会的責任)、サプライチェーン管理の問題などは課題が多いところです。

 自分の企業が厳しい中でどこまでサプライチェーンの末端まで心配できるか課題はありますが、サプライヤー工場の閉鎖は、自らのリスクにもなります。こういう状況で姿勢が問われます。

 21年は国連の「児童労働撤廃国際年」です。ビジネスや市民社会がそれぞれの役割を果たしていくことが必要です。そのためにも国際的な連携・連帯・対話を進めることが、以前よりも重要性を増しています。

岩附代表

(繊研新聞本紙20年6月25日付)

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