アダストリアが子会社を通じて販売するサステイナブルなDtoC(消費者直販)ブランド「O0u」(オー・ゼロ・ユー)は、環境負荷の低い素材を使ったブランドだ。20~30代の女性に向けた服を販売するほか、社外企業向けのユニフォームにも乗り出した。
包み隠さず開示
アダストリアはCSR(企業の社会的責任)活動の一環として、サーキュラーエコノミーの実現とサステイナブル経営を加速させる目的で、20年にアドアーリンクを設立した。主力事業はオー・ゼロ・ユーの企画販売と、アダストリアグループのキャリー品やサンプル品を販売するオフプライスショップの運営だ。
オー・ゼロ・ユーは21年3月に、アドアーリンクのサステイナブルな取り組みを体現するブランドとしてスタートした。再生素材や天然繊維を使ったメンズとレディスのアパレルを作っている。
主な販路はアダストリアの自社EC「ドットエスティ」とブランド単独の公式ECサイトだ。スタート当時は、サステイナブルファッションへの意識が高まっていた。都内のファッションビルや百貨店から引き合いがあり、期間限定店を開くことも多かった。
国際団体のSAC(サステイナブル・アパレル連合)が開発した独自指標「ヒグ・インデックス」にのっとり、全ての商品の生産時に使用した水の量と二酸化炭素(CO2)排出量を公式サイトで公開している。穂積亜矢子営業部長は「PRが目的ではない。都合のいいことだけでなく、包み隠さず全て見せることで、自分たちができていないことも明確になる」と話す。
レディスを増やす
最初はベーシックなデザインでモノトーンの商品を多く企画した。長く着てもらえる服を提供するべきという考えや、サステイナブルな素材は価格が高いため、トレンドを意識しすぎた商品は売れ残るのではという懸念が背景にあった。
だが、それらはあまり売れなかった。「環境に優しいというだけでは消費者は買ってくれない。ファッション性が大事だと痛感した」。スタートから1年ほど経った頃に、商品構成を見直すことにした。
ユニセックスの商品が多かったが、レディスを拡充した。外部からデザイナーを招き、フリルやギャザー、カラフルなデザインを増やした。リサイクルのシアーやチュールを探し、素材にも幅を出した。
ジャケットの中心価格は1万円台前半から、1万円台中頃に上がったが、20~30代の女性を中心に客数が増えた。2年目は売り上げが前年比で2倍以上になった。現在も売り上げは伸びており、今期も前年実績を上回る見通しだ。
外部企業の制服も
DtoCの販売は軌道に乗ってきたが、アドアーリンクは会社の規模が小さいため、期間限定店の販売員に割ける人員が不足している課題がある。そのため、EC販売により力を入れることにし、同時に外部企業のユニフォームを制作するBtoB(企業間取引)事業を強化することにした。
23年10月に、眼鏡の「ゾフ」の店舗スタッフが着用するユニフォームを手掛けた。一般客向けに販売している商品と同じく、再生ポリエステルを使っている。ゾフを運営するインターメスティックにとっては、CSRの取り組みをアピールでき、販売員のモチベーションアップにも一役買っている。現在も複数の企業と、ユニフォーム制作に関する商談が進行中だ。
23年12月には米非営利団体のビーラボの、社会と環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際認証「Bコーポレーション」を取得した。
「サステイナブル事業は義務感でやりがち。楽しくなければ広まらない」。アドアーリンクの目標は、オー・ゼロ・ユーの事業を通して、サステイナビリティーに興味を持つきっかけを与えることだ。ファッションを楽しむのと、環境について考えるのは共存できることを消費者に伝えたいという。
今後は公式サイトだけでなく、イベントなどでもブランドの活動を広める取り組みを増やす。人が集まる場で発信することで、ブランドの魅力だけでなく、サステイナブルな取り組みの大切さも知ってもらう考えだ。
(繊研新聞本紙24年7月30日付)