【ファッションとサステイナビリティー】人権課題に取り組む三起商行 方針策定や国内外工場に実態調査

2023/10/19 05:30 更新


サプライヤー向けに説明会を実施して方針を共有した

 三起商行は、早くから人権課題に取り組んでいる。16年にNGO(非政府組織)から指摘を受けたことを起点に、人権方針の策定や国内外の工場への実態調査、定期的なヒアリングなどを実施。4月には経営企画本部にESG推進部を新設し、グループ全体に領域を広げる。

実習生問題を最優先に

 発端は16年。ミキハウストレードの委託先のミャンマー工場で、労働者の権利侵害、劣悪な労働環境が国際人権NGOから指摘されたことがきっかけだ。同社は第三者機関の報告書を公開した後、CSR(企業の社会的責任)調達ガイドラインを策定。サプライヤー向けに説明会を実施して方針を共有するなど、改善に努めた。

 その後、人権デューデリジェンス(企業活動における人権リスクを抑える取り組み)を進める中で、国内工場の外国人技能実習生問題を最優先課題に掲げた。日本製子供服の安心、安全の価値をうたう同社にとって、ブランド毀損(きそん)につながる問題のためだ。外国人技能実習生を雇用する工場を特定すべく、アンケートを実施。18年から1年半をかけ、一次サプライヤーの縫製工場全25社をNGOザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)の担当者と共に訪問調査した。経営者へのインタビュー、国内法や国際基準の説明、労働規則など書面上の改善アドバイスなどを行った。

PDCAを継続的に

 コロナ禍では、実習生が来日できない工場の状況をヒアリングしたり、ワクチンの接種状況を確認するなど、フォローアップに努めた。国内工場の調査が一巡したため、次のステップとして、中国の縫製工場3社にも実態調査を実施。現地のカケンテストセンターの監査員に依頼し、レポート内容もおおむね良好だった。

 ASSCが開発した労働相談アプリ「ゲンバワイズ」は、国内外172のサプライヤーが導入。工員が働く中で生じる悩みを、アプリを通じて直接ASSCに相談できるもので、運用コストは三起商行が負担する。3年間で相談は1件のみで、円満解決した。これを評価するか、運用不備があるのかを検証中だ。

 これまでCSR活動は、商品企画本部を軸に動いていたが、グループ全体に領域を広げるため、今年4月にESG推進部を新設した。企画本部を統括していた平野芳紀氏が執行役員部長に就いた。まずは人権方針、環境方針をミキハウスグループ全体の方針として改定。8月にサプライヤーに周知し、同意を得た。

 今年度は、新たにベトナムの縫製工場の調査を予定するほか、国内工場の調査も二巡目を進める。再度の訪問や、日本人のみで運営している工場にも範囲を広げる。人権の取り組みは全体像として形になってきてはいるが、内容が不十分として、整備や深掘りなどPDCA(計画・実行・評価・改善)を継続的に実践していく。

サプライヤーと伴走で

経営企画本部ESG推進部執行役員部長 平野芳紀氏

平野氏

 我々は、工場と長い年月をかけて関係を築いてきました。人権や環境課題に取り組めるのも、この信頼の土台があってこそです。17年にサプライヤー向けの説明会を実施した際は、「こういう話をされるのは初めて」という反応が大半でしたが、拒否される人はいませんでした。強調したのは、監査の際、不備があったからといって取引をやめるという話ではないということ。国際的な基準に対してギャップがあるならば、早期に発見し、手を打てるところから当社も伴走します、とお伝えしました。今後は工場経営者に向けて、国際基準や社会情勢の共有など、共に目線を合わせる勉強会にも力を入れます。

■三起商行の人権への取り組み

16年 NGOヒューマンライツ・ナウが委託先ミャンマー工場を調査 労働環境問題を指摘
17年1月 第三者機関の報告書をホームページで公表
9月

「CSR調達方針」「サプライヤー人権方針」「サプライヤー行動規範」策定

サプライヤー向けに「CSR調達に関する説明会」実施

国内の製造委託先工場92社に外国人技能実習生に関するアンケート調査を実施

18~19年 技能実習生を雇用している全25社に実態調査
19年7月 サプライチェーン約100社に人権デューデリジェンス実施
9月 英国現代奴隷法2015に関するステートメントの署名と公表
20年 豪州現代奴隷法に関するステートメントの署名と公表
7月 労働相談アプリ「ゲンバワイズ」導入
21年 国内染色工場2社に実態調査
22年 中国の縫製工場3社を実態調査
23年4月 経営企画本部にESG推進部を新設
8月 「ミキハウスグループ人権方針」「ミキハウスグループ環境方針」に改定

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(繊研新聞本紙23年10月19日付)

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