ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)が、設立5年目を機に一般社団法人化した。設立当初は11社だった会員数は現在約70社となり、繊維・ファッション産業における川上から川下まで、多様な企業が参画する団体へと拡大。パブリックパートナーには消費者庁、経済産業省、環境省、京都市が参加している。JSFAは「多くの企業が集まる組織として、活動をより活発化するため、またガバナンス強化の面からも一般社団法人化を決めた」。
【関連記事】ジャパンサステナブルファッションアライアンスが一般社団法人化
新生JSFAの代表理事兼共同代表は、エコミットの坂野晶上席執行役員チーフサステイナビリティーオフィサーESG推進室長が就任。理事にはジェプランの高尾正樹代表取締役執行役員社長、YKKの河崎勇平サステナビリティ推進室企画グループグループ長。監事兼共同代表には帝人フロンティアの神山統光技術・生産本部サステナビリティ戦略推進部部長、共同代表にユナイテッドアローズの玉井菜緒サステナビリティ推進部部長がそれぞれ就いた。

共同で解決策導き出す
JSFAはサステイナブルな産業への変革に向けて、業界及び行政への影響力を高めるための組織拡大と、多様な業種が参画する中で組織全体のコンセンサスを図ることが重要な課題になる。
JSFAは、「サステイナブルなファッション産業への移行を推進することを目的に、個社では解決が難しい課題に対して、共同で解決策を導き出していく」企業連携プラットフォーム(PF)としての存在感を発揮する。施策として掲げるのは、サステイナブルファッションに関する知見の共有、ファッションロスゼロ・カーボンニュートラルに向けた協働、国内外の重要動向の先行把握、業界内の共通課題を改善するために必要な政策提言など。同アライアンスのコミットメントは①パリ協定に賛同し、脱炭素型へのビジネスの移行を促進する(逆行する事業については脱却に努める)②50年までのネットゼロ宣言やRE100(事業活動で使用する電力を再エネで調達することを目指す国際的イニシアチブ)、EP100(企業が事業のエネルギー効率を倍増させることを目指す国際的イニシアチブ)、EV100(事業活動で利用する車両を100%電気自動車へ移行することを目指す国際的イニシアチブ)などへの参加に努める③サプライヤー・顧客に働きかけ、バリューチェーン全体の透明化に努める④適量生産・適量購入・循環利用を推進する⑤アライアンスの一員として、政策関与やサステイナブルファッションの協働に賛同・協力する――を打ち出している。
満場一致で法人化決定
今回の一般社団法人化に向けては、組織内の議論の中で一部の正会員企業から「組織としての出口戦略を明確にする必要がある。法人化は見送るべき」とする慎重な声もあったが、「会員企業による議論を重ねて決めた。多くの企業が集まる組織として活動をより活発化していくため、ガバナンス強化の面でも法人設立が必要であるとの判断に至った」(坂野代表理事)として、最終的には「正会員の満場一致」で決めた。「個社では解決が難しい課題に対して共同で解決策を導き出していきたい。パブリックパートナーである消費者庁、経済産業省、環境省などの国の委託事業に関わるには法人であることが必要」(坂野代表理事)。「JSFAは政府機関への政策提言も含めて社会に対して発言をしており、組織内で正当に議論をされ、各会員企業の総意をもって発言していることを担保するガバナンスが重要」(高尾理事)としている。
求められる経済合理性
JSFAは毎年「ファッション産業におけるサステナビリティ推進に向けた政策提言書」をまとめ、アライアンスのパブリックパートナーである経済産業省、環境省、消費者庁に提出している。
今年の提言書では、「バージン材と再生材の価格差をなくすための制度を行政に求めていきたい」として、繊維to繊維リサイクルに焦点を絞り、課題と提案を取りまとめ、「『繊維製品における資源循環ロードマップ』での個別目標、『手放される衣料品のうち、繊維to繊維リサイクルで5万トンを処理』実現に向けた、繊維アパレル産業における課題と施策の進め方に係る提言」を提出。再生材利用を容易にする制度や再生材利用を促進する補助の仕組みを要請した。
サステイナブルな産業への変革に向けた施策を推進するためには、高い倫理観に基づいた社会的責任の遂行だけでは難しい側面がある。経済合理性も含めた経済・市場基盤の整備が求められており、繊維・ファッション産業における川上から川下までを組織するJSFAの役割は今後さらに大きくなる。
(繊研新聞本紙25年9月29日付)