声優で歌手の小林愛香さんがディレクターを務めるアパレルブランド「yipyip」(イップイップ)は、本格的な服作りで小林さんのファンを中心に、年々顧客を増やしている。19年のスタート以来、成長を続けている理由と今後の展望について聞いた。
(高塩夏彦)
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楽しさを伝える
きっかけは大手ライフスタイルショップから、アパレル関連の協業を持ちかけられたことだ。その際、服好きの小林さんから「自分でブランドをやってみたい」と提案し、立ち上げに至った。イラストレーターとしても活躍している行場ユミさんをデザイナーに迎え、ECと期間限定店を主販路に動き出した。
当初の主力はTシャツやスウェット、軽アウターなど。日常的に着たいと思うものを、グッズとは一味違うファッションアイテムとして打ち出した。
重視したのは「服を着る楽しさを伝えること」。小林さんの意見をもとに、遊び心のあるオリジナルのイラストや、リバーシブルで複数の着方ができるディテールなどを取り入れた。
春夏・秋冬で新作を出し、時々のトレンドを反映している。「ファッションに自信がなかったというファンの方から、『イップイップを着ていると周りに褒められる』と言われることが多い」
ブランドが軌道に乗るにつれて「きれいめのアイテムや柄物、冬場に着られるアウターも欲しい」というファンの声が増えた。25年秋冬から生産背景を刷新し、商品の拡充に乗り出した。販売もDtoC(消費者直販)に切り替えた。
以降はセットアップで着られるウール調のテーラードジャケット、中わたのアウターなどを強化。価格は2万円台と既存の商品の一格上だが、評判が良かった。Tシャツとアウターの売り上げ構成比がほぼ同じになるなど、客単価も上がった。

雑貨の幅も広げた。ファンの声を取り入れたリュックは、前面にメッシュポケットがついており、穴を開けずにグッズの缶バッジを飾れる。シルバー925製のジュエリーなど特別感のある商品も増やした。
協業企画を強化
26年からは協業企画を強化する。既に人気バッグブランドとの取り組みなどが決まっている。「遊び心を大事にするブランドだからこそ、協業先のテイストに合わせて柔軟な企画ができるのが強み」という。
期間限定店の開催も強化する。12月5~8日にはLHPルクア大阪で開く。今後は自身のコンサートツアーに合わせて、会場の物販や近隣の商業施設に出店することで、普段はECで購入する地方の顧客に直接商品を見てもらう機会を作ることも検討する。
将来的な目標は直営店の出店だ。そのためには、型数を増やし、さらに幅を広げることが必要だとみている。「ベーシックな商品と目を引くアイテムのバランスなど、MDも大事になってくる」
毎シーズン、顧客に新作を届ける楽しみが原動力だ。「私自身、素材や縫製の知識がついてきたし、やりたいことを実現できる生産体制も整っている。春夏・秋冬のサイクルを継続しつつ、時々サプライズも提供する。そんなブランドでありたい」と話す。

