地球や社会の持続可能性への取り組みが、あらゆる分野で盛り上がりを見せている。繊維・ファッション産業でも、地球環境や人権・社会に配慮した製品やサプライチェーンに関する認証への参加やラベル取得への関心が高まっている。気候変動、サプライチェーンにおける環境や社会負荷低減のための取り組み、持続可能な素材の普及など、繊維・ファッション産業にかかわりの深い認証やプログラムを紹介する。
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オーガニック原料
■GOTS
オーガニックテキスタイル世界基準。オーガニックな繊維製品を認証する国際基準。定められた基準を満たす生産、流通過程を経たオーガニック原料を使った(糸、生地、衣料品などの)繊維製品を証明する。認証済みのオーガニック繊維が95%以上使われていることを示すラベルと、70%以上95%未満を示すラベルの2種類がある。原料だけでなく、サプライチェーンにおける環境負荷や人権配慮に対しても規定がある
■OCS
米NPO(非営利組織)のテキスタイルエクスチェンジが保有するオーガニック繊維製品を証明する基準。原料から加工、製造、物流、最終製品までの履歴を追跡し、オーガニック繊維の含有率を第三者認証機関によって審査する。原料の95%以上がオーガニックの「OCS100」と、5%以上95%未満の「OCSBlended」がある
◇OCSを持つテキスタイルエクスチェンジは、オーガニック原料以外にも、以下のような獣毛やリサイクルなどの世界的な基準を持つ
■CCS テキスタイルエクスチェンジが保有する全ての基準の基礎となる
■RWS ウールに関して、原料から加工、製造、物流、最終製品までの履歴を追跡し、ウール繊維の履歴を第三者認証機関によって審査する基準
■RMS モヘアに関して、原料から加工、製造、物流、最終製品までの履歴を追跡し、モヘア繊維の履歴を第三者認証機関によって審査する基準
■RDS ダウンに関して、原料から加工、製造、物流、最終製品までの履歴を追跡し、ダウンの履歴を第三者認証機関によって審査する基準
■GRS/RCS リサイクルに関して、原料から加工、製造、物流、最終製品までの履歴を追跡し、リサイクル繊維の履歴を第三者認証機関によって審査する基準。GRSは、社会的・環境的要件と化学薬品についても規定、審査される
サステイナブルコットン
■国際フェアトレード認証コットンラベル
「フェアトレードインターナショナル」の基準に基づく認証。原料のコットン生産から貿易、加工、製造、製品までの各工程で、社会的・環境的・経済的基準を定めた国際フェアトレード基準が守られていることを証明する。同基準では生産者への適正な価格と、地域の発展のためのプレミアムの保証のほか、労働環境や人権配慮、農薬・薬品の使用削減、土壌や水、生物多様性の保全など、社会や環境への配慮が定められている
■BCIコットン
綿花栽培における水の節約や化学薬品の削減、労働条件改善など持続可能な綿花栽培の普及を目指す非営利組織「ベター・コットン・イニシアティブ」によるプログラム。農家、紡績、商社、工場、小売り、ブランドなどが参加する。六つの原則、44の基準、進捗状況を測定する八つの指針に基づいた綿花栽培基準を有している
■CmiA
コットン・メイド・イン・アフリカ。サハラ以南のアフリカの小規模農家の生活改善を目指すAid by Trade Foundation(AbTF)が提供するプログラム
■コットン2040
英国NGO(非政府組織)のフォーラム・フォー・ザ・フューチャーが立ち上げた持続可能なコットンの使用・普及を目指すプログラムや団体と、使用するブランド・企業をつなぎサステイナブルコットンの普及を目指す取り組み
■コットンコネクト
英国を拠点にするサステイナブルコットンの普及を目指す団体。農家から小売り・ブランドまで透明性あるサプライチェーンでつなぐ取り組み
森を守る ■FSC認証
森の動植物や地域の人に配慮し、豊かな森を維持できるように管理された森の木材や木材が使われた製品であることを証明する。森林管理を認証するFM認証と、加工・流通過程の管理を認証するCoC認証とで成り立つ。FM認証の規格には10の原則、70の基準、その下に約200もの細かい指標があり、この規格に沿って第三者機関が審査する
安全性や社会・環境負荷の低減
■ZDHC
繊維及び靴のサプライチェーンで環境系への有害化学物質の排出ゼロを目指す国際団体。有害化学物質の排出ゼロを目指し、工程での使用物質の制限に取り組む
■SAC
サステイナブル・アパレル連合。アパレル、フットウェア、テキスタイル産業の企業・団体が参加し、バリューチェーンにおける環境・社会的負荷を減らすために活動する。環境や社会的負荷を測定する独自のツール「ヒグインデックス」を提供する
■ブルーサイン
スイスのブルーサイン・テクノロジーが運営管理する、繊維業界の環境保全、労働者・消費者の安全に関する基準。繊維製品の各生産段階で使われる糸や染料・添加剤、織布などの材料から、人の健康や環境に悪影響を与えると考えられる全ての物質の除去を目的とし、最も厳格な環境・安全標準とされる
■エコテックス認証
スイスのエコテックス国際共同体による繊維製品の安全性を証明するガイドライン。繊維製品の生産に使われる化学物質を検査して安全性を証明する認証。エコテックススタンダード100は、350超の有害化学物質を対象に分析・検査してクリアした製品に与えられる。染料・助剤等の化学薬剤の安全証明「エコパスポート」、環境負荷や労働背景なども含めた企業や工場のサステイナブル証明「ステップ」、最高峰ラベルとなるトレーサビリティー証明「メイドイングリーン」などシリーズがある
地球温暖化抑制への取り組み
■パリ協定
15年に採択された20年以降の温暖化対策の国際的な枠組み。世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃以下に抑え、1.5℃に抑える努力を追求する
■ファッション協定(ファッションパクト)
テキスタイル・ファッション関連企業による環境負荷を軽減するための協定。19年8月のG7サミット(先進国首脳会議)で紹介された。地球温暖化、生物多様性、海洋保護に焦点を当てた目標を設定する
■ファッション業界気候行動憲章
パリ協定の目標を支持。30年までに温室効果ガス総排出量の30%削減、50年までに実質ゼロを目指す
(繊研新聞本紙20年11月25日付)