《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》学生と社会の接点をつくる

2023/10/30 06:26 更新


ゼミの研究テーマの一つ「モノマチ」について実行委員に取材

 学生時代は、一部の大企業や身近な人が働く企業を知っていても、中小企業や物作りの現場を知る機会は少ないです。私は今年の夏、跡見学園女子大学のマネジメント学部の許伸江(きょ・のぶえ)教授のゼミに関わりました。地域や企業の活動に携わり、卒業後の働くイメージにもつなげている事例を紹介します。

主体的に学ぶ

 許教授は、90年代後半の韓国ソウルの東大門市場と東京原宿のファッション産業を中心とした研究に取り組み、現在は中小企業論やベンチャー経営論などの授業を担当しています。マネジメント学部の学生は、経営やマーケティング、起業に関心を持ち、ゼミでは企業の方々との交流や経験を実践しています。

 過去の事例の一つは、墨田区の地域イベント「スミファ」。学生はSNSで広報を担当し、自分たちで企業への取材と撮影を行って魅力やワークショップの様子を伝えました。それらは、地域活性化やまちづくりに企業がどう携わり、イベント活動がどう成り立っているかを経験する場となりました。他の事例では、岩手県岩泉町から譲り受けた害獣の革を活用する皮革関連企業のプロジェクトに参加しました。製品の企画から革小物メーカーに実際に生産を委託して催事での販売を行い、在庫を持って販売する難しさも学びました。

「スミファ」参加企業の工場を見学してヒヤリング
岩手県岩泉町から譲り受けた熊の革に表面加工をする学生。猟師さんが催事に来てくれるなど交流も生まれました

経験が糧となる

 ゼミでは今年、女性起業家をテーマの一つに掲げて研究しています。女子大とあって、雑貨、アパレルなど、自分に身近な分野で将来起業したい思いを持つ学生が目立ちます。学生たちは興味を持った経営者に、起業のヒストリーや現在の事業状況、業界のことなどインタビュー調査し、ディスカッションして研究成果をまとめていきます。12月の他大学との合同ゼミで成果を発表し合う予定です。具体的な事例を研究することで、気付きを得て、経営学が実社会でどのように生かせるかを体験します。

これまでの合同ゼミでの研究発表の様子

 「ゼミの活動を通じて、学生の多くが中小企業や地域産業の魅力に気付くようになります」と許先生。自分が活躍できるかもしれないと中小企業を就職先の候補にしたり、自分に合う企業を調べて見極める力が育ったりと成果は大きいそうです。企業との直接的な接点が貴重な経験になります。「学生時代に何かをやり遂げたことや、実際に向上心を持って働いている人を拝見したことで、社会人になってしんどいことがあっても妥協したくないという気持ちで頑張っている」という卒業生もいます。

 関わる企業は、自社で当たり前の仕事を「すごい」「かっこいい」と言われて従業員の士気が上がり、学生を迎える準備に向けて社内にコミュニケーションが生まれる効果もあり、よい機会になっているようです。

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。



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