設立から26年目を迎えた京都の「モリカゲシャツ」。代表の森蔭大介さんは初心に返り、「より多くの人にモリカゲシャツに気付いて頂きたい」と今年6月に初めて合同展示会に出展しました。こだわりを持った服作りとともに、顧客とのつながりから得られるひらめきを大事に継続しています。
顧客と共に
森蔭さんは93年に文化服装学院を卒業。作る人と買う人の顔がわかる服作りがしたいと地元の京都でオーダーメイドを開始しました。当時はデザイン性の高い、洗いざらしで着られるメンズシャツはあまり市場になく、自分用に作ったシャツを着ていると、それがほしいと言われることが度重なり、メンズシャツの既製品とパターンオーダーで97年にモリカゲシャツを立ち上げました。雑誌で紹介されることも多く、個人客の注文と卸売の依頼が相次ぎ、アイテムを絞ったことでコンセプトが伝わったと手応えを感じたそうです。それから何年もかけて要望に耳を傾け、レディスのシャツやワンピースなどアイテムを少しずつ増やし、シャツを軸にコーディネートを楽しむラインナップへと拡大しました。顧客と自分たちの気持ちが「ガチッと合う時に」新しいことを起こすことで「モリカゲシャツはお客様と共に歩んできていると感じる」そうです。
これまでは直接の販売に力を入れてきました。当初は意図的に生産数を絞り、販売は直営の京都店とオンラインショップに限定。11年には、関東圏の顧客が多いことから鎌倉に出店。都内各地で期間限定ショップを12回開催したのち、鎌倉から渋谷区神宮前に移転しました。
顧客から「楽ちんですごくいい」「ここはこうした方が使いやすいな」と聞いたり、「シャツを着ていたら人に褒められたよ」と同じ人がまた買いにきてくれたり。森蔭さんは、自分たちのものづくりが響いていると実感できた時がうれしいと話します。
もっと見てもらいたい
合同展に参加し、01年で終了させた卸売りをまた始めたいと思った経緯は、シャツ以外に、ボトムなども作れるようになったことをもっと多くの人に知ってもらい、全国各地の顧客に身近に現物を見てもらえる環境を作るのが良いと思ったからだそうです。長く続けてきたことで自分たちのスキルや作る技術が進化し、縫製工場などとの信頼関係も深まり、やれることがものすごく増えたそうです。
「僕らみたいな規模で運営する一番のメリットは、良いものを、ある程度適正な価格で買って頂いて、長く着続けてもらう商売のスタイルができること」と森蔭さん。大事に長く着てもらいたいから、汚れたり破れたりしたらリペアできるようパターンを工夫し、生地を保管し、染め替えにも対応しています。面倒くさくて人がやりたがらない、やれないことをやり続ける姿勢は、安心感や信頼感につながり、ファンの気持ちをつかむ一因になっています。
■おざわ・めぐみ
デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。