【ファッションECサミットin関西】ライブ配信で密に交流

2019/12/09 06:29 更新


 繊研新聞社は11月、「ファッションECサミットin関西」を開いた。東京や大阪、福岡で開催している「ファッションECサミット」の第5弾。アパレル関係者約100人が来場した。パネルディスカッションや注目サービスのセミナーが開かれた。要旨を紹介する。

どう描く?直営ECの顧客作りと購買体験

【登壇者】

  • デイトナ・インターナショナル 執行役員EC事業部事業部長兼社長室 小林昌樹氏
  • シティーヒル 支援本部経営企画部 近間実智也氏
  • マキシム フルフィルメント部部長 神田剛直氏
左から小林氏、神田氏、近間氏

 パネルディスカッションのテーマは「直営ECだからこその顧客作り、顧客体験をどう高めるか」。メンズ・レディス複合のセレクトショップ「フリークスストア」を展開するデイトナ・インターナショナル、「マジェスティックレゴン」などレディス専門店のシティーヒル、「神戸レタス」でほぼECに特化しているマキシムのEC担当者が登壇した。

 まず各社のECの位置付けや重視するKPI(重要経営指標)を聞いた。3社とも複数のECモールに出店したり、ゾゾタウンで大きく売り上げを伸ばしている共通点があり、ECモールについて「顧客接点を拡大するために欠かせない場所で、モールによって売れるものは異なる」とした。自社ECは「最適なタイミング・場所・時間でお客に商品を届ける場所」(近間氏)との意見で一致した。

 直営ECで重視しているKPI(重要経営指標)は、セッション数やCVR(購入率)が多く上がった。小林氏は「SNSの週間フォロワー数、自社EC商品の撮影や発送リードタイム、店頭の商品がECに反映されているかの商品展開率」と話した。

小林氏

 「どのように顧客とのコミュニケーションや実店舗と連動しているか」の問いには、近間氏は「店とECの会員情報を統合して、アプリとメルマガを中心に個客ごとにアプローチを変えている」とした。実店舗との連動では在庫一元管理によって、EC注文商品の店舗受け取りや取り寄せ・試着のクリック&コレクトを実現した。小林氏は「顧客ファーストのマインドを追求している」といい、お客とキャンプやスノーボードで交流しているハートフルな取り組みを「デジタルでも実行したい」と話した。

近間氏

 神田氏は「インスタグラムで3年ほどライブ配信しているが、今年から顕著に反応が良くなった」と話した。1回の配信時間は2、3時間で「違う色・サイズを見せてほしい」などコメントが活発に寄せられる。「EC専業にとって1:nで接客できるのは大きな効果があり、よりお客を想像できるようになった」。マキシムの取り組みを聞いて10月からライブ配信を始めたシティーヒルも「1回目の配信の時点でセッション数が伸びて、その日の自社EC売り上げが2倍になった」(近間氏)と話した。小林氏も「社内インフルエンサーがライブ配信をした商品は店でもECでも売れ、非常に反応が良い」という。

神田氏

 「ECで実感している効果は」のテーマについても意見が交わされた。前期のEC売上高が70%増だったデイトナ・インターナショナルでは、「店舗への来客が増える」ことを上げた。ゾゾタウンでの認知を高めたことで、これまで苦戦することもあった地方店の出店の際に、「待ってましたと来店してもらえるようになった」と語った。ゾゾタウンで予約販売の活用とMDコントロールすることでキャッシュフローも良くなったという。

 近間氏は「在庫一元管理によって販売機会ロスを減らせたこと」とした。これまでECで欠品していた商品の4割に再入荷のリクエストがあったといい、在庫を最適なチャネルに配分することで、機会損失を解消している。また店頭在庫は3割削減できる成果も出ている。

会場の様子

 最後に、ECの未来や注目しているツールについても語られた。神田氏は5G(第5世代移動通信システム)に注目している。スマホの普及の波に乗ってスマホ対応を進めることでECを伸ばしてきた自社の経験から、「世の中のインフラやデバイスの変化にちゅうちょして時代に乗り遅れれば客は離反する」と語った。

 小林氏は販売員コーディネート発信アプリ「スタッフスタート」を導入して「新しい販売員像をつくる」、近間氏は「感動や体験など情緒的な感情も伝えられる温度のあるECを目指したい」と話した。

パル×プレイド×バニッシュ・スタンダード オムニチャネルの鍵は「テクノロジー×人」

【登壇者】

  • パル 執行役員プロモーション推進部部長兼コミュニケーションデザイン室室長兼WEB事業推進室室長 堀田覚氏
  • プレイド BizDev 田中悠氏
  • バニッシュ・スタンダード 代表取締役 小野里寧晃氏
左から小野里氏、堀田氏、田中氏

 パルの堀田氏が「顧客発想のオムニチャネル戦略」をどう実現するのか語った。活用している販売員コーディネート発信アプリ「スタッフスタート」(バニッシュ・スタンダード)とウェブ接客プラットフォーム「カルテ」(プレイド)の事例を交えながら取り組みを紹介した。

 まずスタッフスタート、カルテがサービスを説明した。スタッフスタートは販売員がSNSに投稿したコーディネート画像経由で、ECで何がいくら売れたのかを可視化できるツール。小野里氏は「販売員がデジタル接客の成果を把握してモチベーションになっている」とした。約1000ブランドのECで導入されており、導入ECではEC売上高の平均44%がスタッフスタート経由だという。

 カルテはウェブ上の客の行動履歴やプロフィルなどのデータをリアルタイムで解析する。客を「カート落ち」「長い滞在時間」「VIP」などに細かく分類し、個客ごとにリマインドやウェブチャット、プッシュ通知などで、「最適な1to1コミュニケーションをワンストップで行える」(田中氏)のが強みだ。アプリや外部サービスとも連携して、個客ごとにデータをひもづけて解析できる。

 次にパルのオムニチャネル戦略の考え方について、堀田氏は「テクノロジー×人が軸になる」とした。「販売スタッフの働き方をアップデートする」といい、同社では1000人のスタッフが総フォロワー数340万人となる各個人のSNSで情報発信することで店・ECに客を呼んでいる。店頭でのアプリ会員獲得でリピート客を増やしたり、EC売り上げ貢献でも販売スタッフの重要性を語った。

 EC売上高に占めるスタッフスタート経由比率は約7割で、「地方店の販売スタッフが大きな力になっている」。地方店の方がデジタル接客に割ける時間が多く、一人で6万人のフォロワーを抱えているスタッフもいる。「ECやSNS上で販売員が顧客をつくれる」とし、その顧客は店で接客を受けたいとも考えるため、SNSで出勤日を告知することも多いという。

 カルテの活用方法も紹介した。初回訪問、会員登録、初回購入などのフェーズごとにユーザーを分類して、「お気に入り・カート追加」「閲覧時間」などで客のモチベーションをスコア化、そして個客ごとにメールやLINE、アプリなどでプッシュ通知して、1to1コミュニケーションを実現している。今後は商品や店舗、スタッフスタートのデータも取り込み、価格・在庫変動や再入荷などのお知らせを客にプッシュ通知できるようにする考えだ。

 最後に、カルテとスタッフスタートが今後さらにデータ連携して提供できるサービスを紹介した。

 客は商品をカートに入れたり購入すると、それを着用したスタッフのコーディネート画像を見られる。また自分の体形に似ている販売員や、自分の興味のある商品に詳しいスタッフとのマッチングなどが行える。販売スタッフは客の店とECの両方の購買履歴を把握して、より細やかな接客が可能になるという。

ヤプリ×ドーム アプリはCVR向上、データ取得に有効

【登壇者】

  • ドーム コンシューマーインサイト部チームリーダー 阿部敏氏
  • ヤプリ 執行役員兼CCO(チーフコミュニケーションオフィサー) 金子洋平氏
左から金子氏、阿部氏

 アプリ運営プラットフォーム「ヤプリ」の金子氏がコーディネーターとなり、ドームの阿部氏に「アンダーアーマー、挑戦するデジタル戦略」を聞いた。

 ドームの直営ECは、アンダーアーマーのブランド体験を楽しんでもらうことを最優先にしたコーポレートサイトと位置付けている。EC売上高に占める比率は直営ECがECモールを上回り、直営ECサイトの訪問者数は前年比1.2倍のペースで伸ばしている。

 直営ECでは「しつこいぐらいに商品説明する」ことに力を注いでいる。それはアンダーアーマーが「パフォーマンスアパレル」であり、サイズなど商品を間違って購入してしまうと、ブランド体験につながらないからだ。「ブランドの特性上、ECモールよりも直営ECが有効だ」とする。

 実店舗も同様の役割を担う。新宿の旗艦店は物を売ることよりもブランドの考えや商品説明などを重視。実際に着て動いてもらうことが第一で、そのためのイベントスペースもある。

 アプリ活用の目的は「購買情報を取得して、お客が何を考え、望むのかをつかみ、サービスを改善すること」だという。アプリユーザーには5%オフの価格で購入できるインセンティブを設けている。アプリがCVR(購入率)のアップやデータ取得に貢献しているといい、アプリ会員限定商品や先行サービスで顧客化も進めている。

 OMO(オンラインとオフラインの融合)については、「消費者はオンライン、オフラインを意識していない」として、アプリをハブに取り組む考えを示した。すでに店頭で欠品している商品はEC在庫を引き当てるなどOMOに着手している。

 OMOのポイントは共創になるとみる。「クラウドが基本で、スピード感があるか、社会を良くしていこうと考えているか」を一緒に取り組むパートナーの選出基準とした。

●注目サービスプレゼンテーション

注目企業が登壇したプレゼンリレーの様子は下記からダウンロード可能です。

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(繊研新聞本紙19年12月5日付)



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