LINE元社長、スマホ動画で世界へ

2015/09/25 18:32 更新


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 元LINE社長の森川亮さんが、動画配信サイトC Channel (Cチャンネル)を2015年春に立ち上げ、ここまで順調に成長している。キャッチフレーズは、「女子のための動画ファッションマガジン」。1分ほどの動画視聴で、ファッションやヘアメイクなど、若い女の子達の関心情報を手軽に取得できる。

 27日に行われる東京ガールズコレクションとの協業や一般ユーザーへの投稿権限の拡大、インバウンドをにらんだ多言語対応など、話題が目白押しだ。

 日本のファッション、将来的にはアジアのファッションのトレンド発信プラットフォームをめざし、初年度から世界展開に向けてひた走る。立ち上げの狙いと現状、今後の構想を、森川さんに聞いた。

 

若い世代にターゲットを絞り、かつ影響力のあるメディアはあまりありません。若い人がテレビや雑誌を見ない時代ですからね

 

■ファッション、ヘアメイク、フードなど女性のライフスタイルを動画で配信している。事業立ち上げの背景は?

ファッション業界の変化があります。これまでファッション企業は、洋服にお金を使う年齢層が上の世代に広告費を投資してきましたが、20代前後の若い世代を育てる必要性を感じていた。

一方、若い世代にターゲットを絞り、かつ影響力のあるメディアはあまりありません。若い人がテレビや雑誌を見ない時代ですからね。

さらに、パソコンで見ることを想定した動画配信サイトはあっても、スマートフォン(スマホ)専用の動画配信サイトは、まだ少ないです。パソコンは横型表示が標準ですが、スマホは縦型でないとフィットしません。シーチャンネルの主なターゲットは、10代後半~20代後半です。動画の形・向きも、縦型で設計しています。

■サービス概要を改めて。

ファッション、メイク、ヘア、ビューティー、フードなど7つのカテゴリーがあり、“クリッパー”と独自に呼んでいる女性の投稿者たちが、スマホで撮った動画をあげています。クリッパーは、常時100人ほどいて、基準は、見た目の可愛さ、やる気、そしてインターネット上での拡散力。

中には、かつてタレント事務所に所属していたモデルやタレントもいる。年齢層は、ターゲットと同世代です。自分の日常生活やライフスタイルそのものを仕事にしたい人は増えている。編集者兼モデルのような働き方です。

最近は海外からの投稿が増え、1日の新着は当初の10本から20本に増えています。累計本数は2500本ほどでしょうか。投稿本数を確保するため、クリッパーには多少の支払いをしているのと、人気ランキングでインセンティブを付けています。

FotorCreated

■海外というのは?

現地のエージェントと契約するなどして、ニューヨーク、ソウル、台北、シンガポール、バンコク、ドバイに拠点を作り、各地で(現地語や日本語で動画をアップする)クリッパーが稼動し始めています。国内は東京が中心でしたが、札幌、福岡エリアから投稿があがってくる環境が整い、関西でも間もなく立ち上がります。

グローバルなスケールで、若い女性の投稿ネットワークができてきた。特にソウル、台北は、現地の有名人やインフルエンサーをクリッパーに起用しているため、現地の一般ユーザーが見るモチベーションは大きい。世界中から投稿され、また世界中から見に来る、と言う構図です。

次のステップとして、一般ユーザーも参加できるようにします。これまでクリッパーに限定していた投稿権限を一般にも公開します。9月27日の東京ガールズコレクション(TGC)、同23日の関西コレクションが皮切りです。

Cチャンネル専用のビデオカメラ・編集アプリ「C CAMERA」を無料で公開し、それを使って誰もが投稿できるようになります。撮ったものをアプリ内で編集し、ダイレクトにサイトに投稿できる。手軽で簡単です。TGCでは、自撮りでコーディネートを投稿してもらい、ファッションリーダーにスタイルチェックしてもらうことを考えています。

カメラアプリが広がれば、テーマを投げ掛け、それに応じた動画が寄せられてくるイメージを描いています。ある食材を使った料理やレシピを募集するとか、地元の美味しいお店を紹介し合ったりするとか、アメリカ西海岸ファッションが流行ったら実際に現地のスタイルを投稿してもらうとか、です。使い方は色々考えられます。

■スタート当初は、コンテンツの質を保つため、一般ユーザーの投稿に慎重だったと思うが。

森川_より
「PVやスケールを狙って、刺激的な物や微細な部分に傾いていくと、海外で通用しない。ライトな使われ方でもいいから、リアルな生活がハッピーな人を集め、早い段階で海外へ出ていく」と森川氏

大きく成長するサービスというのは、一般ユーザーの取り込みがなければありえません。半年運用して、マナーが整ってきたと思い、一般公開に踏み切ります。

仕組みから考えても、それほど荒れるとは思わない。投稿側からすると、自分のアカウントにフォロワーが増えない限り、投稿動画を見てくれる人も増えていきませんから。閲覧側は見るコンテンツを選別する。フォローしているユーザーのつぶやきが自身のタイムラインに表示される、ツイッターと同じ方式です。

加えて、個人IDに紐付いていますから、変な動画はあげにくいし、そういったものは自然淘汰される。インスタグラムにも、変な写真あげにくい雰囲気があるでしょう。あれと一緒です。

またアルゴリズムでも、求められる物は表示され、求められない物は深いところへ沈んでいく設計になっています。アルゴリズムとしては、ビッグデータ分析の専門家と連携することも計画している。

■これまでの推移をどう評価しているか。

ここまで順調に推移していて、動画再生数は8月が250万回、今月は400万回ペースで推移し、12月には1000万回を見込んでいます。ニュースアプリのスマートニュースに、コンテンツが認められ、動画が掲載されることも増えてきた。

見られるか見られないかは、テーマや出ている人によって差が大きいです。最近だと、原宿界隈にオープンしたばかりの人気店のレポートや、ヘアメイク、プチプラメイクのハウツー、アパレルの展示会の秋の新作紹介などの人気が高かった。

カメラアプリと配信サイトのアプリは8月にリリース済みです。本格的に告知していないので、ダウンロード数はこれから、というところですが、9月末のTGCが一つのきっかけになります。

 

人間というのは、楽な方へ楽な方へ流れるもので、文字なしで情報伝達が成立することがわかれば、動画の有用性が広く認知されるようになる

 

■動画ごとのクリップ数やお気に入り数を見ていると、いわゆる他のSNSと比べると、あまり多いという印象は受けないが。

ユーザーは、リアルな生活が充実している人が多いので、見るには見るが、あまり参加しません。いわゆるウェブメディアは、インターネットに傾倒しているユーザーが主役なので、参加姿勢が非常にアクティブ。

一方のCチャンネルは、さらっと見られています。積極的に関わろう、とかではない。外側から見える指標は、それほど大きい数字ではありませんが、再生数がその傾向を示しています。

一般的にウェブニュースは刺激的な物が多くなりがちです。PV数やスケールを求めるとそうなってしまいます。シーチャンネルは、リアルな生活が常にハッピーな人を集めたい。刺激的な物に傾いていってしまっては、海外で通用しません。日本人は細かいことを気にしますが、それは世界的に見ると特殊です。

海外の多くの国ではそれほど細かい芸やうんちくを気にしないし、日本でPVが取れている話題では盛り上がりません。国内ではライトにやって、早い段階で海外に出て行きたいと考えています。

動画で想定されるコミュニケーションと言えば、ファッションコーディネートのアドバイスをし合うような悩み相談、ペット、ラーメン、城好きのサークルなど。他には、服作りの工程を見せたり、プロを目指すダンサーが踊りをアピールしたり。

当初は、それぞれの業界で既にプロになっている人やそのステージを目指す人がアピールする場ですが、ゆくゆくは趣味のつながりの世界へと変わっていくと思います。動画投稿の敷居は今後、確実に下がっていきます。

人間というのは、楽な方へ楽な方へ流れるもので、文字なしで情報伝達が成立することがわかれば、動画の有用性が広く認知されるようになるはずです。

世界トップレベルの動画配信サイトは、月間再生数が1~5億回。来年にはこの水準に躍り出る見通しです。

■タイアップや広告出稿も増えている。

スタート当初は、動画ブログのような体裁でしたが、今はタイアップでメディアや企業の参加が増えています。

ViViやnon・no、Zipper、OZ magazine、Tokyo walkerといった雑誌、@cosme、楽天トラベルといったサイトなど、ブランドとしての参加です。また広告として、クロスカンパニーやローソン、マルコメなどが出稿しています。

■文字や静止画にはない、動画の良さ・特徴とは?

サイトカラーと共通のイエローが目を引く原宿のオフィス

ヘアメイクやグルメは動画の特徴が生きやすいです。ヘアアレンジが出来上がっていく過程は静止画よりずっとわかりやすいし、飲食店なら出来上がった料理だけでなく調理過程まで届けることができます。

ファッションを考えると、縦長のサイズは全身コーディネートが収まり、相性が良いです。

カメラアプリの一般公開を機に、アパレルショップによるコーディネートの投稿が増えるでしょう。その他、ヨガの先生がオンラインで教室開いたり、タレント志望者がアピールの場に活用したり、教育の場やスターが生まれる場にもなっていきます。

来年には、GPSで位置情報と連携します。街歩きをしている時にスマホに通知が届き、近くの飲食店のお薦めメニューが動画で流れるなど、そういったことが可能になる。来月には英語、中国語に対応します。これは海外現地ユーザーを増やすことのほか、インバウンドビジネスを想定しています。

通常、動画にはテキストテロップを入れています。電車内など音を出せない公共の場でも楽しんでもらえる他、外国語対応する際に、翻訳作業等を簡単にするためです。

現状、検索機能はあまり使われていません。サイトを訪れたユーザーはまず、流行りのトピックの動画を見ます。一本見たら、関連動画が周辺に表示されるので、それらを連なるように見ていきます。

来年GPSに連携したら、位置情報との関係で動画に触れたり、またSNSのような感覚で友達のおすすめ動画を見たり、むしろそういった広がりをイメージしています。

 

世の中的には、ゆるいものを期待しています。カフェみたいなゆるさに共感するんです

 

■ファッション企業の広告も出ている。広告主のメリットは?

若い層や今まで関心や接点が薄かった人にアプローチできること。そして、動画を安価に作れることです。

完成動画のオール・ライツは、当社が持っています。広告主はCチャンネルでアピールできるのはもちろん、自社のホームページやSNS、店頭サイネージ等で流すことができます。ウェブ広告は、バナー広告が見られなくなり、文字広告が読まれなくなっています。

動画が安価に作れ、それが制限無く使えるのは魅力的なはず。広告費は月100万円で、動画制作4本分が含まれています。動画は、外注してプロに作ってもらうと、その価格水準はまだまだ高いので、制作費だけ考えても安い、と言われます。

出演するクリッパーたちは、特定の事務所に所属しないフリーの子です。配信や放映の権利がややこしくない、という以外にも狙いがあります。有名人を起用するより、メッセージを届き易くなるのです。世界的な知名度のある有名人でもない限り、そこそこの有名人が語っていても、嘘っぽい。

自撮りだと、動画を見ている方が出演者に話しかけられているように感じられます。人って、テレビカメラを向けられると、姿勢や口調が固くなってしまいニュースキャスターっぽくなるんですよね。自撮りだと体がリラックスするから、出演している方に無理がないのです。

すると、見ている者にメッセージがすっと入ってくる。世の中的に、過度なマッチングに疲れている部分があり、ゆるいものを期待しています。カフェみたいなゆるさに共感するんです。

マネタイズは基本、広告収入を考えています。この間、ネイティブ広告が話題ですが、広告主である作り手の意識が出過ぎているように感じます。広告は面白ければ、見てもらえるので、そこを追求し、自社で作っていきます。

これまでのECが安い物を大量にある選択肢の中から探す購買だったとしたら、動画広告でロイヤリティーを感じてもらい、高くて少量の物、ここにしかない物を購買に結びつけることができる、と考えています。

そのほかには、自社でECを手掛ける、という方法もあるかもしれません。

Cチャンネルはアジアを押さえたい。アジアで日本は人気があるので、それを強みにブランド認知を高めます

 

■課題は?

強いて言うなら、動画の視聴は、通信費が高いこと。特に、若い人が気にする部分。ただし、動画コンテンツは中毒性が高いので、見始めると、定着してもらえます。環境的にはwifiの利用が浸透していますしね。

■ファッション業界では「服が売れない」と言われるが、これについてどう思うか?

親近感や気楽さが求められているのではないでしょうか。若い人は、店員さんが商品を売ろうとしていると近付かない、と言います。一見カフェと見せかけ、ゆるい空間の中で結果的に買い物している、それくらいがちょうどいいのでは。いかに長期戦で臨むか、でもあります。

加えて、いかに海外に出て行く道筋を作るか、もポイントでしょう。これからアジアのマーケットは一つになります。Cチャンネルはアジアを押さえたい。アジアで日本は人気があるので、それを強みにブランド認知を高めます。

森川_たて
動画×ファッションの掛け合わせで、日本を軸としたアジアのトレンド発信拠点をめざす

エンターテイメント業界を見ると、韓国の音楽や映画がインターネットを通じてアジアに広がり、日本は先を越されました。一方で、ファッションの分野は、アジア圏で圧倒的に支持を集める国がまだ定まっていません。日本のファッションは国産を見ても作りがしっかりしていて、その価値が認められています。

エンタメ業界と同様のことが起こる前に、日本のファッションカルチャーを発信するプラットフォームを作り、海外へ出て行きます。アジアにも色んなファッションのテイストやグループがあるでしょう。その中でいかに、日本を含むアジア系のファッションが好きなグループを捉えていくか、を考えています。

来月には中国でサービスを開始します。ユーザー数は、来春には海外が日本を上回る見込みです。

■今後のイメージは?

世界で通用するメディアブランド。Vogueのカジュアル版みたいな。そこに載っているのは世界のトレンドで、24時間投稿する人と見に来る人がいて、地球とともにぐるぐる回り続けているイメージです。

(テキスト=小平麻由)

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