VRコンテンツ制作のDiO “バーチャル百貨店”を事業化

2021/05/14 06:30 更新


リアル店舗ならではの商品発見やブランド体験をウェブで再現する

 リアル店舗のような空間で買い物体験ができる〝バーチャル百貨店〟で百貨店の再生へ――これまで観光業界向けにVR(仮想現実)コンテンツを制作してきたDiO(京都市、一筆芳巳社長)は、百貨店向けにリアル店舗での購買体験をウェブで再現するVRコマース(VC)事業を開始した。すでに松屋など複数の百貨店で導入が決まっている。

(藤川友樹)

 提供するVRコマースのプラットフォームは「実際にリアル店舗に行かなくても、リアル店舗にいるような商品発見やブランド体験が楽しめる」のが特徴。VR技術を用いて店舗空間と陳列商品をEC上に再現。訪問者は売り場をバーチャル上で、ぶらぶら歩いて見て回り、商品との出会いや発見、驚きを経て、質感やディテールを確認した上で購入できるといった、リアルに近い買い物体験ができる。

 同社のVR技術はもともと美術館や博物館、寺社文化財などをデジタルアーカイブ化することに活用しており「(画質は)最高5億ピクセルの世界最高水準」(同社)という。そのため、VC上でも、商品や店舗の清潔感や高級感のほか、服の素材感なども再現できる。売り場で商品が入れ替わる度にカメラマンが撮影し直し、VC上に反映できる体制を構築する。

 またVRの特性を生かし、商品画像をクリックすると、生産現場や取引先の本店など百貨店と異なるVRコンテンツも楽しめるといった工夫をすることで、エンゲージメントを深め、訪問者のサイト滞在時間を伸ばし、購買意欲を促進することもできる。

 リアル店舗に来店できない遠方の消費者を呼び込み、24時間来店者を呼び込めるため、リアル店舗の投資利益率(ROI)を高めることにもつながる。

 同サービスを導入する百貨店は、撮影費用などのランニングコストは無料で利用できる。EC売上高から一定手数料をDiOに支払う仕組み。

 DiOにとって百貨店向けサービスに参入するのは初の試み。そこで、特別顧問に元東急百貨店社長の二橋千裕氏を招いた。二橋氏は「リアル店舗は決してなくなることはない。デジタルと融合すれば、リアル店舗の魅力を最大化できると信じている」とコメント。一筆社長は「まずは百貨店を応援する企業でありたい。ECで困難とされてきた高額商品の販売拡大の道筋をつけ、ブランドの歴史や経験までサイバー空間で追求する」と話している。



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