「履けるなら履きたい!」が生む消費㊦

2018/05/04 04:30 更新


《「履けるなら履きたい!」が生む消費 百貨店婦人靴売り場から㊦》密な意思疎通で生き残る

 一人ひとりに合ったパンプスを提供するには、技術力の高い国内メーカーが身近に存在し、作り手と売り手が意思疎通を深めなくてはならない。工業製品として持続可能な物作りを担保できる売り方が肝要だ。

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木型を通じて

 伊勢丹新宿本店に常設する「ナンバートゥエンティワン」のイージーオーダーは、国内メーカー3社に加え、皮革卸2社が13種の革在庫で協力、約4週間で納品する仕組み。「オーダーそのものは目的じゃない。お客様に喜んでもらうサービスであり、メーカーと協業して作り上げた木型を通じ、コミュニケーションを取っていくことを大事にしたい」という。

 半年で4足を購入する顧客もおり、満足度の高さが信頼を深めている。1人の客が繰り返し利用する関係を築けるのは、百貨店らしさの一つ。28種の木型の一部は、既製靴のシーズン商品で使い、一致するデザイン物へと購入対象の選択肢は広がる。中長期的には、そのヒット率を上げる商品構成を目指す。

 オーダーでなくても、個に寄り添える。それを証明するのが、そごう横浜店の共同開発商品。上級シューフィッターの林美樹さんが婦人靴卸やメーカーに依頼し、既製靴の木型をベースに材料や作りを改良してもらい、脱げにくく痛くなりにくいハイヒールを13年から販売している。実績を上げ続け、今春は9ブランド60SKU(在庫最小管理単位)を扱う。照準を絞るのは「甲が薄くて幅の広い足(開張足)」。パンプスが苦手と「相談に来る方の90%以上が、足の横アーチが落ちている」からだ。

そごう横浜店の共同開発商品、今春は5センチヒールのポインテッドトウに勢いがある

 売れ筋1位は、5年間変わらず8センチヒールのラウンドトウで、ピーク時より落ち着いても年間約1000足が売れる。開発商品のプロパー消化率は平均で70%。効率の高さは「横幅のサイズを選べなくても、現場で具合を見ながら直す」上級シューフィッターの手腕。開発商品はD~Eだが、2サイズ分は調整できる。「ぴったりのパンプスを選んでも、履いているうちにフィッティングは変わり、適時の調整が必要。購入後もきちんとフォローできれば、店の価値を感じてもらえる。リアル店が生き残れる強み」と林さん。

3D足型計測導入

 通常の仕入れ商品で新たな取り組みを始めたのは、阪急うめだ本店。2月に婦人靴売り場に3D足型計測機を導入、足の形に合った靴を提案している。

阪急うめだ本店が導入した3D足型計測機に関心を示す客は平日も多い

 メーカーの協力を得て、「エイゾー」「ブティックオーサキ」など国内5ブランドのプレーンパンプスのデータを取って組み込み、タブレット端末に、計測結果に合わせたリコメンド商品が出てくる。まだ試験段階で改良は必要だが、同店のような来店客数の多い売り場でも「パーソナルな関係を構築する」機会は広がるはずだ。



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