ここのがっこうと富士吉田定住センターは、山梨県富士吉田市で、ここのがっこうの22年の受講生の展覧会を4月23日まで開催している。3回目を迎えた同展覧会の目的は、東京から最も近い産地でデザイナーと物作りの現場をより近づけ、未来へと発展させること。古くから織物の産地として栄えてきた街に人を呼び込み、地域の活性化も担っている。
発表の場は、メイン会場のフジムロを含めて合計8カ所。昨年は4カ所だったが、「地元の人たちも開催内容を理解するようになって、空間の提供依頼を好意的に受け入れてくれるようになった」と仲介する藤枝大裕さんは話す。旧ニコル喫茶店、洋装のつちや・隣、一品堂書店・隣、旧文化服装学院といった歴史を感じさせる建物の空間のほか、小室浅間神社や中央まちかど公園の屋外会場も加わり、出展者も来場者もレトロな街並みの魅力を知る機会となっている。
参加した生徒のうち、プライマリーコースの31人はファブカフェフジ&ワタトウビルでの合同展示となった。アドバンスドコース16人、マテリアル&マターコース20人は、会場が増えたことで一人が一つの部屋を使うことができた。スペースの限られた都内では難しいことだが、「雰囲気のある空間、個別に表現ができる環境に参加者の意欲の高さがうかがえ、数日前から泊まり込んで準備する生徒もいた」という。交通費も滞在費も自己負担で開催している。
表現の形は、洋服、テキスタイル、アクセサリー、オブジェ、写真、占いなど様々。それぞれに感じさせるのは、自分のルーツを見据えたテクスチャーの力強さだ。一例を挙げると、小樽出身の澁木智宏さんは、雪が街一面を覆う「なだらかなひとつづきの調和」が根底にあると捉え、古着などを白いフェルトのパンチングでつなぎ、雪に覆われたドレスのように見せた。
美大で染色を学び、アニメーションの仕事に携わった村尾拓美さんは、生地に3Dプリンターで出力したパネルをつなぐ手法を生かし、思春期にはまったボーイズラブ文化の身体のフェチズムを表現した。