【センケンカフェ】《聞かせて!先生!!漢方・健康カレンダー》夏の新型コロナウイルス対策
すっかり暑くなってきましたね。今回は新型コロナウイルス感染の対策について、ちょっと気になることがありますので、整理していきましょう。
まず、コロナウイルスは日光と風に弱いことが分かっています。お天道様の下で、風が吹いていれば、ウイルスは10分もすれば死んでしまいます。日光が届かず、冷房が利いて乾燥した室内では3時間は生きられるのですが、普通に外を歩いていて、ウイルスをもらってくることは少ないわけです。仮に、公園でたまたま背後にいた人が陽性患者で、くしゃみをして髪の毛にウイルスが付いたとしても、10分で消えてしまいます。ただ、何か食べている時は、口を開けますから、話は違ってきますが。つまり、前からお話しているように、コロナウイルスは怖がり過ぎないでいいのです。
ただ、日常生活で大切なアルコール消毒について、正しい使い方があまり知られていないようです。皆さん、アルコール消毒液は毎回、どのくらい使っていますか? シュッシュと2、3回と付けて、ビシャビシャにしてしまう人がいますが、これは間違いです。アルコールは蒸発した時に滅菌の作用が働くものなので、ビシャビシャと濡れたままでは効果がありません。使用法の通りの1回分を手にとってサッと伸ばして使うのがいいのです。ジェルよりも、液状のものが蒸発しやすいですし、お薦めです。当初、アルコールが足りないからと言って、強いお酒を転用する例もあったようですが、アルコール濃度は75%以上必要なことと、お酒には糖分が多く蒸発しにくいので、やめてください。
アルコールは気化熱と水分を奪って蒸発し、滅菌する仕組みなので、気軽に活用できます。例えば、玄関に1本スプレーを置いておいて帰宅した時に、髪の毛など気になるところに噴霧する。手は洗えば済みますが、ほかはスプレーと考えれば便利ですよね。
これから心配なのが、マスクです。ますます暑くなる季節ですから、さらに蒸れてしまうマスクは好ましくありません。人のいない場所では外すなど、工夫してほしいと思います。本来、日本の夏は高温多湿で、体も新陳代謝が活発になるので、蒸し暑ささえ上手にコントロールできれば、比較的健康に過ごせるのですが、今年は暑さと湿気の調節が重要になります。
暑さをしのぐには、意外と思われても、パジャマをダボダボの大きいサイズの長袖・長ズボンにすること、暑くてもおなかを出さないで寝ることが大切です。何度もお話していますが、肌に触れる布が汗を吸収することで、筋肉や胃腸の調子にまで良い影響があるので、夏の過ごし方として試してみてください。特に、おなかの弱い人は、腹巻きもいいですよ。ベッドシーツの上に、昔ながらのゴザを1枚敷いて眠ると、湿気を吸収してくれます。顔にゴザの痕がつくのが、玉に瑕(きず)くらいで、日本の夏には重宝ですよ。
冷たいものは飲まない、飲む時は口の中で温める。これを習慣にしましょう。水分のとり過ぎには気をつけなくてはいけませんし、おなかがゴロゴロしやすい人は乳製品を減らしてください。熱中症予防としては、体にこもった熱を下げ、水分を補うキュウリやスイカが適しています。口の渇きにもいいですよ。
6月30日は夏越しの祓(はらえ)でした。昔から大晦日(おおみそか)の大祓と同様に、半年に1回、疫病や邪気など穢(けが)れを祓う風習ですよね。このように季節や気象が体に及ぼす影響を知り、乗り切る知恵はいろいろありますから、これからも健やかに過ごしていきましょう。
■今月の心得
ねもと・ゆきお 東京・大岡山の漢方平和堂薬局店主。横浜薬科大学特任教授。薬学博士。
(繊研新聞20年6月26日付から編集)
ー「聞かせて!先生!!漢方・健康カレンダー」とは?
繊研新聞では毎月、「聞かせて!先生!!漢方・健康カレンダー」を掲載し、東京・大岡山の漢方平和堂薬局店主、根本幸夫先生にご登場いただいています。
ファッションと漢方というと、不思議な取り合わせに見えるかもしれませんが、根本先生は「ファッションと漢方には共通項がある」と話します。
「病気をしたら、薬を服用して体の内側から治す。外側には、服を着る。そうして、元気を出す」からです。
そういえば、薬を飲むことは「服用」ですし、ずばり「服薬」とも言いますね。
衣類には体を危険から守るという機能があるだけでなく、私たちの内面に働きかける力があります。
体の芯から気持ち良くリラックスさせることも、困難に対して心を奮い立たせることも、ファッションの力です。
好きな服を自由に着て、楽しく過ごす日々にも、健康は欠かせません。そんな暮らしの思いがけないヒントに出会える根本先生の連載を、どうぞよろしくお願いいたします。(デスク:若狭純子)