せーの「#FR2」デジタル時代のブランディング㊤

2019/11/02 06:30 更新


《新成長の条件 せーの「#FR2」 デジタル時代のブランディング㊤》常識覆す営業利益率30%超 売り切れ御免で価値守る

 カジュアルメーカー・小売りのせーの(東京、石川涼社長)が14年に始めたストリートファッションブランド「#FR2」(エフアールツー)が、業界の常識を覆す高効率のビジネスモデルを構築し、注目されている。主な販売は国内単独店8とEC、海外の卸し先。19年8月期は増収、営業利益率は30%超となり、01年の創業以来、最高の利益を出した。写真を軸にしたコミュニケーションに早くから着手し、海外でファンを獲得。〝売り切れ御免〟やセールをしないというスタンスが収益につながっている。

(友森克樹)

新しいやり方を決意

 発端は、海外で過ごす時間が増えた石川社長の知らぬ間に、メンズ業態「ヴァンキッシュ」が上顧客向け大幅セールを行っていたこと。「一番の顧客にセールで売って、次のシーズンから誰がプロパーで買うんだ」と社内に喝を入れた。今は回復基調にあるものの、当時のヴァンキッシュは最盛期に比べると落ち込んでおり、「セールに頼らないブランドを新しいやり方で始めなければいけない」と決意を固めた。

 そこで目を付けたのが海外。「日本人に売れなくても良いと割り切り、海外で売れる物を中心に考えた」。ブランドを訴求するツールには、当時まだ日本で盛り上がっていなかったインスタグラムを利用。「ウサギのカメラマンのブランド」をコンセプトに、写真をプリントしたTシャツやフォトアートの販売から始めた。女性のセクシーな写真と服を掛け合わせたプロモーションが斬新で、海外を中心にフォロワーを獲得。海外のセレブやモデルなどインスタグラムでフォロワーが1000万人以上いる人々が商品を身に着けた画像を投稿するようになり、一般層に広がった。現在もこのサイクルが続いており、新規客が絶えないという。

 ヒット商品も生まれた。写真でのコミュニケーションが主流となるなか、消費者がインスタグラムに投稿することを見越して開発した「Smokingkills」「NoPhotos」といったキャッチーなロゴを入れたTシャツが爆発的に売れた。現在もプリントTシャツは人気で、1000枚が実店舗とECで即日完売することも多いという。Tシャツの中心価格は7000~8000円。

 ブランド価値を守るため、ヒット品番を簡単に追加しないほか、多くの商品が売り切れ御免だ。セールもしないため、消費者には「常に買い時」という意識が浸透、現在までのプロパー消化率はほぼ100%という。

 初めて実店舗を出したのは17年春。これまで全て路面に出店し、高い営業利益率に寄与している。東京・原宿の店は、海外客の売上高比率が約8割。海外客に対応する公式ECサイトは、これまで約130カ国から受注しているという。

17年4月にオープンした「#FR2」原宿店

何でも買える今だから

 現在、#FR2の主力インスタグラムアカウントのフォロワー数は約20万人。外国人を中心に支持を獲得し、事業が軌道に乗った近年、新たに始めたのが「ECで販売しない商品だけを売るお土産屋型の派生業態」だ。18年夏に#FR2梅(原宿)を出店して以降、18年12月に月桃(那覇市)、19年4月に柳(金沢市)と店を増やしてきた。全て外国人観光客の往来が盛んな観光地への出店で〝ここでしか買えない〟要素が後押しし、小さい売り場ながら売り上げは大きい。主力商品はプリントTシャツだ。

 梅は予算比3倍の売り上げを達成。売り場約30平方メートルで月商2000万円に達している。今春の大型連休前にオープンした柳は、初回に投入した500万円分の在庫が4日間で完売する好スタートを切り、現在も売り場13平方メートルで月坪売上高200万円で推移しているという。

 10月4日には京都へ#FR2撫子を出店する予定だ。四条通りと東大路通りが交わるT字路の八坂神社への入り口の目の前で、多数の外国人の集客を見込む。今期(20年8月期)は海外販売の拡大にも力を入れる。年内にタイ・バンコクに路面店を出す予定だ。「世界に行きますよ。誰も追いつけないスピードで」と意気込む。

石川涼社長

(繊研新聞本紙19年9月11日付)



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