産官学で日本のキャッシュレス決済を推進するため、7月に設立されたキャッシュレス推進協議会が本格的に活動を始めた。9日には都内で初会合が開かれ、QRコード決済の標準化をテーマに話し合われた。このほか、中長期的な活動の方向性や、キャッシュレス支払時のペーパーレス化、API(ソフトウェア同士が連携するための仕様)ガイドラインの整備といった7つのテーマごとにプロジェクト形式で協議を進める。キャッシュレス決済の普及・促進に向けた具体的な活動に落とし込んでいく考えだ。
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同協議会は、昨年11月から今年3月まで産官学の有識者が集まり行われてきた「キャッシュレス検討会」を経て、4月に経済産業省がまとめた「キャッシュレス・ビジョン」の推進母体。同ビジョンでは、「大阪・関西万博が開かれる25年に日本のキャッシュレス決済比率40%」という、政府が「未来投資戦略2017」で掲げた目標を「前倒しして、より高い決済比率を実現」すると宣言した。さらに、「将来的には世界最高水準の80%」を目指す。
現在の協議会加盟者数は210団体、1個人、6自治体。そのうち、法人会員は176で、銀行やクレジットカード会社、コンビニ、百貨店、スーパーなど。「地域の自治体レベルでもキャッシュレスへの関心は高い」(同協議会)として、和歌山県、豊田市、豊橋市、山口県、福岡県、佐賀県も加盟した。協議会の会長は日本電信電話の鵜浦博夫相談役、副会長は三越伊勢丹ホールディングスの石塚邦雄特別顧問、みずほ銀行の藤原弘治取締役頭取が務めている。
キャッシュレス決済は、消費者が多額の現金を持たずに買い物でき、紛失・盗難などのリスクが現金より低い。事業者にとっては現金管理コストの削減により生産性が向上するとされ、政府が推進している。主要各国のキャッシュレス決済比率(15年時点)を見ると、韓国の89.1%が最も高く、中国やカナダ、米国、英国などは40~60%台。一方、日本は18.4%。「治安の良さや偽札の少なさ、ATMの利便性の高さ」がキャッシュレス決済が普及しにくい背景として指摘されている。