ビッグメゾンが各地で最新コレクションを披露した。22~23年リゾートコレクションをはじめとするコレクションが揃った。キーワードは海や太陽、星。時空を超えた広大な宇宙、大地がもたらすスピリチュアルなパワーを感じさせる演出が目を引いた。
(青木規子)
グッチは、アレッサンドロ・ミケーレによる最新コレクション「グッチ・コスモゴニー」をイタリアのプーリア州にある城カステル・デル・モンテで開催した。夕暮れ時からライブ中継が始まり、暗くなるとともにショーは始まった。モデルはスモークとともに城の中から登場し、城を取り囲むサークル状のランウェーを歩き出した。身にまとうのは、黒を基調にした荘厳なドレスやシックなスーツ。敬虔(けいけん)な信者の礼装を思わせる黒いドレスは、片側だけケープ状の袖がたっぷりと風をまとう。イエローのパフスリーブブラウスには、メタルビーズを飾ったマキシ丈のジャンパースカート。白黒の左右色違いや、大きなバイアスストライプなど、大胆な柄が強いパワーをプラスする。ジグザグの裾やクロスディテールも目を引く。クラシカルなエッセンスは、パールのロングネックレスやエリザベスカラーといった小物で。ニーハイブーツやランジェリードレスといったセンシュアルな要素ももちろん散りばめられている。2月にミラノで発表したスポーツミックスとはまた違うミケーレのスタイルを描いた。
コスモゴニーとは宇宙進化論の意味。コレクションは、一つの物語が発端になっている。ハンナ・アーレントとヴァルター・ベンヤミンという2人のユダヤ人は1930年代、ともにドイツからアメリカに逃亡しようとしたが、ベンヤミンは行く手を阻まれ、命を絶った。アーレントは彼へのオマージュを込めた物語のなかで、彼が残した思考の断片を組み立てている。ミケーレは、それを暗黒を照らす星をつなぐ星座に見立てた。星座のような刺繍だけでなく、ラストには城にも星座が描かれた。
ルイ・ヴィトンは23年ウィメンズクルーズコレクションを、米カリフォルニア州サンディエゴ郊外のラホヤにあるソーク研究所で発表した。西海岸の太平洋沿いにある同研究所は、建築家ルイス・カーンの作品。建築や科学の分野を研究する場であるとともに、ブランドが巡る「旅」を描く上でも重要な場所としてとらえているという。
ランウェーとなったテラスの背景には海と空が広がっている。リリースに「主賓は太陽」とあるように、コレクションは西海岸特有のドライな光をまとって始まった。登場したのは、さまざまな要素が混在するニコラ・ジェスキエールならではのスタイル。未来的な輝きをまといつつ、現代のストリートの軽やかさもあり、原始的な布使いも取り入れる。さまざまな時代を今に落とし込んだ。冒頭は体を包み込む厳かなテントラインのドレス。それが次第に肌見せスタイルに変化していく。スクエア状のケープやクロスディテールのクロップトトップに、ミニ丈のティアードスカートやギャザースカート。メタルをうろこ状に重ねたトップやパネルスカートは鎧(よろい)のようで、いにしえの戦士のような強さを感じさせる。一方で鮮やかなブルーやイエロー、きらめくスパンコールは未来的。光はあちらこちらに反射し、シルエットにプリズムのような反射を生み出す。リネンやシルク、レザーなどがさまざまな光沢を生み出している。
シャネルは、モナコのモンテカルロビーチで22~23年クルーズコレクションを披露。砂浜から水辺ギリギリまでを歩きながら、リビエラの海辺に漂うエレガンスを表現した。ヴィルジニー・ヴィアールによるコスモポリタンな優雅さと海辺の心地良いムードとともに、F1のスポーティーなスピード感が描かれている。冒頭に登場したのは、カーレーサーが身にまとう体にフィットしたコンビネゾンとナンバリングしたキャップ。それをシグネチャーのツイードジャケットを元に仕立てた。赤いチェックのツイードにチェーンバッグ、ツートンのパンプス。シャネルのスペシャルアイテムを、スポーティーに演出する。そのイメージをベースに、カジュアルなルックが勢揃いする。ショートパンツにツイードジャケット、チェッカーフラッグのトップにノースリーブのブルゾン。風をまとうセミフレアドレスやキャミソールドレスは、F1を楽しみながらリゾートを過ごす女性を思わせる。深いVネックのドレスは花模様のニットレースでフェミニンに仕上げられた。