大手セレクトショップが、10~20代の若い客層にアプローチするための新規事業に乗り出している。ユナイテッドアローズは、ビジネスウェアに特化した新業態の1号店を出した。ビームスは高校生向けの制服ブランドを始める。創業から数十年が経過し、大人客が主力ターゲットとなる中で、次世代に自社のブランドを早い段階から知ってもらおうとする狙いがある。
ユナイテッドアローズ、20代の価格、機能、立地
9月29日、東京の八重洲地下街に「ワークトリップ・アウトフィッツ・グリーンレーベルリラクシング」の1号店がオープンした。ユナイテッドアローズの「グリーンレーベルリラクシング」業態から派生したメンズ、レディスのビジネス向けアイテムに特化した新店だ。
実店舗でスーツ
スーツは既存のグリーンレーベルの裾値に相当するセットアップで3万円が中心価格。デザインや仕立てのレベルは維持しつつ、ウール以外にポリエステルなどの素材も使い、ストレッチやウォッシャブルなどの機能性を備えた商品を増やした。価格、機能性、1号店を出した八重洲という立地、それぞれに狙いがある。
グリーンレーベルはユナイテッドアローズの中でもオリジナル比率が高く、SCを中心に拡大してきたが、店舗が60を超え、スタートから20年近く経過し、顧客の大人化が進んだ。主力商品で強みでもあるスーツは主力客の年齢が上がるにつれ、インポート素材を使ったものも増え、20代の仕事着としては値の張るものが多くなっていた。
価格を抑え、イージーケアが可能な商品を増やしたのは、20代需要を改めて取り込むためだ。カジュアルな服ならネットで買えるが、シャツやタイとの合わせ方を確認しないと購入に踏み切りにくいスーツの場合、実店舗で接客した方が売りやすい。立地も通勤から帰宅までの導線である地下街が最適と考えた。
ビームス、親世代の認知を10代へ
ビームスは学校制服ブランド「ビームス・スクール」を立ち上げた。
この新規事業の母体は大学サークルに対してのユニフォーム事業だ。スタートしたのは1988年。当時多かった大学生のビームスファンの需要に応え、サークル活動用のユニフォームを販売していたが、彼らが社会人となるにつれ、企業向けユニフォームにも広がった。
早い段階に接点
高校制服の監修も12年から菅公学生服と組んで行ってきた。ビームス・スクールはこの取り組みとは別に、学校指定のない自由制服も含め、広く学生時代に着用する制服を手掛けようというものだ。単なるライセンス事業としてだけではなく、将来の顧客である10代に、早い段階からアプローチする狙いもある。
ビームスは顧客年齢が20代後半からで40~50代も多い。10代との直接の接点を作ることは難しいが、親世代のビームス認知度は高い。サークルから企業向けに広がりを見せたように、親世代が認めたことがきっかけで着るようになった制服を入り口に、10代の学生にもビームスを知ってもらおうというわけだ。
2社とも次世代の顧客作りが、現状の店で待っているだけでは出来ないと感じている。ネットを通じたアプローチだけでなく、実店舗や商品で若い客層に自ら近づく動きは、今後他社にも広がる可能性がある。
繊研 2016/10/07 日付 19567 号 1 面