【第19回アジア太平洋小売業者大会から⑨】経済産業省消費・流通政策課長 伊藤政道氏 効率化と高度化の同時追求が課題

2019/10/22 06:27 更新


《新しい小売り、消費、潮流~第19回アジア太平洋小売業者大会から⑨》経済産業省消費・流通政策課長伊藤政道氏 効率化と高度化の同時追求が課題

 経済産業省は小売り・流通業界の課題を解決するため、IoT(モノのインターネット)技術やAI(人工知能)などの導入による「スマートストア」の実現策、流通構造改革、キャッシュレス決済の促進に取り組んでいる。商務・サービスグループ消費・流通政策課の伊藤政道課長は今後の日本の小売業界の進むべき方向性などを語った。

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■購買の判断基準が変化

 日本の小売業が抱える課題は多い。一つは中国でも発展しているシェアリングエコノミーの普及・拡大。モノを購入するだけでなく、複数のモノをシェアしていく消費者が日本でも増えている。小売業は単純にモノを売るだけではこの流れに対応できない。

 消費者のモノを買う時の判断基準も変化している。政府が実施した消費者調査によると、00年は価格が安いかどうかを購買の最終判断基準にする消費者が最も多かった。ところが、15年の調査ではこうした消費者はかなり減り、買うモノが「便利かどうか」「自分が気に入ったモノかどうか」を基準とする消費者が増えた。

 日本の小売り・流通企業は個社単位で効率化に取り組んでいるが、サプライチェーンでの無駄が多い。代表例が食品の廃棄ロスだ。15年度の日本の食品廃棄ロスは約646万トン。これは世界のフードエイドの量よりも多い。小売りからメーカーに返品された食品の額は約1428億円に上る。これは日本の大きな課題だ。

 少子・高齢化のなかで、市場を拡大していくのは簡単ではない。人手不足も深刻化し、人件費も高騰している。消費者のニーズも変化するなかで、効率化と高度化を同時に追求することが業界の課題だ。

■電子タグを普及拡大

 政府では、技術が発展するなかで、製造から中間の物流、小売りまでデータでつながるサプライチェーン全体の最適化、これらを通じた最適なマッチングを実現するための施策に取り組んでいる。

 電子タグの普及拡大策はその一つ。17年に経産省とコンビニエンスストア各社が「電子タグ1000億枚宣言」をした。25年までにコンビニ全店に電子タグを導入することを目指している。しかし、タグ一つひとつのコストの高さやタグを付ける作業の手間など課題が多い。これらを解決することが25年までの分水嶺(ぶんすいれい)になる。

 キャッシュレス決済の推進は業務効率化やデータの有効活用を進めるうえでも重要だ。日本の全決済に占めるキャッシュレス比率は16年で19.9%。18年は24.1%まで上がったが、他国と比べるとまだ低い。政府として、25年までにキャッシュレス決済比率を40%に引き上げることを閣議決定した。この実現を目指す。(10月1日から開始した)中小・小規模店舗を対象にした「キャッシュレス・ポイント還元事業」はその一環だ。

今後の日本の小売業界の進むべき方向性を語る経産省の伊藤課長

(繊研新聞本紙19年10月4日付/おわり)



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