【第19回アジア太平洋小売業者大会から⑧】丸和運輸機関社長 和佐見勝氏 業界の人材育成、経営支援に取り組む

2019/10/20 06:29 更新


《新しい小売り、消費、潮流~第19回アジア太平洋小売業者大会から⑧》丸和運輸機関社長・和佐見勝氏 業界の人材育成、経営支援に取り組む

 小売業の成長を支える物流業界も人手や配送するトラック不足など様々な課題を抱えている。「桃太郎便」を展開する丸和運輸機関はEC物流とスーパーマーケット向けの低温食品物流事業を軸に成長戦略を進めると同時に、業界の人材育成や経営支援など課題解決策に取り組んでいる。

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■成長戦略に先行投資

 当社は徹底してお客様の不安、不満を解決するため、小売業と一体となった経営支援を行うロジスティクスの専門企業だ。19年3月期の売上高は855億円(前期比15%増)、営業利益58億円(同19%増)、経常利益60億円(27%増)。経常利益率10%以上の業界モデル企業を目指し、お客様の成長戦略に先行投資できる経営、すなわち「前方支援型ロジスティクス」を提供している。

 事業ドメインは食の安全・安心を提供する低温食品物流、今後の高齢化社会に必要不可欠な医薬・医療物流、様々な顧客ニーズと新たな成長市場に対応したEC・常温物流だ。特筆すべきはEC物流と低温食品物流の成長だ。

 日本の物流市場規模は26兆円。そのうち、主要43社の3PL売上高は2兆8000億円で、前年比9.8%増と成長市場になっている。とはいえ、業界全体として抱える課題は多い。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、自動運転などの技術革新によって飛躍的な生産性向上を目指しているが、まだまだの状況。人手不足とトラック不足は深刻化し、17年から輸配送における需給バランスが崩れ、物流危機が続いている。この状況は小売業の経営にも大きな影響を及ぼしている。

 小売業とともに永続的に発展していくため、丸和では30年前から100人以上を採用し、人の確保に取り組んできた。20年以降の新卒採用は500人以上が目標だ。国内外の大学と提携して各大学にロジスティクス専門クラスの設立をお願いし、丸和の物流現場で研修を実施したり、日本語学校の創設などでアジアを中心にした人材育成に取り組んでいる。丸和は創業から、「企業は人が成長しただけ成長する。人の成長なくして、企業の成長はない」と考えている。

■支援ネットワーク設立

 14年の株式上場を機に、トラック不足解決のための大きな決断をした。「小売業と物流業界に恩返ししたい」という強い決意の下、調達資金をどのように活用するかを考え、全国の輸配送企業の利益支援を行うAZ‐COM丸和・支援ネットワークを設立した。

 支払い期日の短縮、車両・燃料の共同購入、人財育成など同業の中小零細企業の経営をサポートしている。現在の参加企業は1239社、21年に3000社、将来は1万社以上を計画している。

 「報恩・感謝」「利他」の心を持って、物流事業者の利益支援をしている。業界初のプラットフォームで、小売業の永続発展に貢献していく。

「小売業と物流業界に恩返ししたい」と様々な施策に取り組む和佐見丸和運輸機関社長

(繊研新聞本紙19年10月3日付)



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