アニメやゲームの世界を日常の着こなしに――アニウェア(東京)は自社ブランド「スーパーグルーピーズ」を通じて、日本のアニメやゲームと協業したファッション商品を製造・販売している。大手アニメ専門店「アニメイト」のグループ企業でもある。ファンの心に響く商品を届けるため、社員が皆、作品への理解と愛を持って企画しており、これまでの協業は100作品以上。主に自社ECサイトで販売し、順調に事業を拡大している。
(石井久美子)
コアなファンに人気
元々、アニメイトグループでメーカー機能を持つムービックの1事業部としてスタートした。採算が取れてきたことから、15年にアニウェアを設立。18年も2ケタ増収で、売上高は20億円にまで成長。スタッフも40人に増えた。
スーパーグルーピーズの主力商品はバッグ、腕時計、財布などの雑貨だが、服も扱う。客層は7割が女性で、10代後半~20代前半が多い。最近人気の作品は「刀剣乱舞―オンライン―」「アイドリッシュセブン」「キングダムハーツⅢ」「アイドルマスター」シリーズなど。一般の人に広く知られた作品より、「コアなファンが付いている作品の方がよく売れる」と稲田貴之取締役スーパーグルーピーズプロデューサー。客単価も1万3500円と高い。
ゲーム作品の人気が目立つのは、「魅力的な作品が多いことに加えて、アプリゲームだと隙間時間で頻繁に遊べてキャラクターへの感情移入もしやすいのでは」と感じている。
商品内での作品、キャラクターの表現には細部まで気を配る。配色を合わせる程度の表面的なデザインは通用しない。社員が作品を理解した上で、どう切り取るかのセンスが腕の見せどころ。マンガ原作で最近アニメ化された「バナナフィッシュ」のバッグ(1万3800円)が売れたが、最終回で手紙が重要なアイテムだったことから、封筒型のチャームを付けて、さらにその中には手紙の一文を書いたカードを封入した。
オリジナルで柄を描き起こしたテキスタイルも多く、「コメディー寄りの作品であれば柄の中にくすっと笑えるモチーフを忍ばせたりする」と、プロダクト部兼コーポレート部シニアマネージャーの伊藤菜見子さん。作品のテンションや濃さに合わせた表現が大切だ。
リアルクローズとして
スーパーグルーピーズが提案するのは、あくまでリアルクローズ。作品のグッズだと強調することなく、普段使いできるデザインにしている。最近はアニメやゲームもカルチャーとしてメジャーになってきたとはいえ、コアなオタクの人たちはまだひっそり楽しむ傾向にある。
EC掲載のモデル着用ビジュアルも、商品を今っぽい普通の服とうまくスタイリングしているのでイメージがわきやすい。撮影用の服の手配には毎回苦労しているものの、スタイリングも自社で組んでいる。ファッション業界出身の社員が多く、稲田さんもその一人だ。
販路は百貨店での催事もたまにあるが、自社ECが基本。作品の人気度によって売り上げが変動するため、常設店よりはECが合うようだ。キャラクター物は売れ残っても値下げはイメージにそぐわないので、受注生産販売の形を取っている。2~3カ月後の納品だが、「ゲームやアニメ関係の商品は予約するカルチャーなので待ってもらえる」というのも興味深い。
現在力を入れているのが、〝アニメバウンド(縛り)〟。イベントなどの際に好きなキャラクターをイメージしたコーディネートを楽しむ現象がすでにあることに注目し、造語として作った。服の楽しみ方の一つとして提案している。
今後は、自社の商品を「カルチャーとして海外に発信したい」思いもある。越境ECを想定し、市場性があるエリアなどを調査している最中という。