東コレ開幕  注目ブランド「アキコアオキ」に聞く

2017/10/16 04:30 更新


注目の東京の新世代――次のファセッタズムは誰だ?

 「アマゾン・ファッション・ウィーク東京18年春夏」が本日開幕する。渋谷ヒカリエなどを主会場に、22日までに55ブランドがランウェーショーやプレゼンテーションを行う。消費不振を背景に、今季は世界の各都市でファッション・ウィークのパワーダウンが目立ったが、東京は冠スポンサーのアマゾンジャパンの主催イベントに有力ブランドも参加。近年にない発信力が期待できそうだ。

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 ここ数年で、「ファセッタズム」「ビューティフルピープル」といった東京のウィークの顔だったブランドが相次いで発表の場をパリに移した。それによる東京の求心力の低下は否めなかったが、「アキコアオキ」「ヨウヘイ・オオノ」など、少しずつ新しい芽が見えてきている。

「アキコアオキ」デザイナー 青木明子さん 次の時代の人間像を見せたい

86年東京生まれ。09年女子美術大学ファッション造形学科卒業後、英ロンドンのセントマーチンズ美術大学で1年間学ぶ。帰国後、ここのがっこうに通いつつ、「ミキオサカベ」でアシスタントを経験。15年春夏に自身のブランドを立ち上げた。現在の卸し先は三越銀座店など9社10店。(写真=柿島達郎)

 アキコアオキは、15年春夏に若手ブランドの合同インスタレーション「東京ニューエイジ」でデビュー。以来、パルコ支援のもとで「ケイスケヨシダ」「リョウタムラカミ」らと合同ショーを行い、17年春夏から単独ショーに切り替えた。それに伴って、クリエイションの方向性も徐々に定まってきた印象だ。“数ある若手の中の一人”から、次のステージへとステップアップしつつある。

■ベーシックと情動

――17年春夏からぐっと精度が上がったように感じる。どんな変化が?

 (16~17年秋冬までの合同ショーの内容に対しては、支援に甘えているといった厳しい意見もあったため)フラストレーションとか、頑張らなきゃいけないという思いもありました。それが単独ショーに切り替えた一番の理由というわけではないけれど、そういう感情は次につながるモチベーションに絶対なる。厳しいことを言われた時は超傷付きますよ。でも、そこから何ができるか考えるのがすごく楽しい。自分は楽観的で根アカなんだと思う。ストレスや不便さはものを作る時に重要ですが、アウトプットする上ではポジティブに持っていきたい。皆がファッションを通して向かいたい先は、ポジティブで愛がある方向だと思うから。

 17年春夏から、デザインの方法を自分が得意なやり方に変えました。私は元々、ジャケット、シャツ、コートといった“ベースがある”アイテムが好きで、そこから崩していくようなデザインが自分に合っていると思います。17年春夏から、自然とそういった手法になりました。

 ベーシックを崩すと話すと、「メンズっぽい」と言われることもあります。一方で、女性特有の情動でいっちゃう部分もあって、その両方が自分のクリエイションだと思う。17~18年秋冬物に対しては、「女性的」とよく言われました。セクシュアルということではなくて、情動やエモーションの部分でそう言われたのかな。女性って脈絡が無いじゃないですか。自分ではそんな意識は無いですけど、すごく感情的な服です。そういう意味で女性的だと思う。

■リアリティーはスタイル

「アキコアオキ」17~18年秋冬

――華やかでショー映えするアイテムが得意。それが「リアルじゃない」と受けとめられることもある。

 私自身驚いたんですが、ショーピースとして作ったアイテムを欲しいといわれることが多いんです。お客さんには、リアルピース、ショーピースという区分けなく、ブランド全体の空気感で判断してもらっているんだと思う。

 リアリティーとは何かを最近よく考えます。セントマーチンズに通っていたころ、イーストロンドンに居る子たちはずたぼろの古着を着ていて、左右が揃っていないような靴もガンガン履いていました。(一般的にはリアルと言えなくても)それが本人の生活や価値観と密接していてすごくかっこよかったし、私はとてもリアルだと思った。日常生活の中で着やすいかどうかより、その人のスタイルになっているかが、私の考えるリアリティーです。

 「スタイルになる」というのをかみ砕くと、うそが無くて、既存のものではないということ。今の時代感を捉えつつ、次の時代の人間像を押し付けでなくちゃんと提案したい。女性が一歩踏み出す時に着たいと思われる服でありたいし、自分自身も挑戦することに恐怖を抱きたくない。そういうブランドになるために、製品そのものの質、ブランドとしての姿勢、ブランディングといったあらゆる面でクオリティーを上げていくことが重要だと思っています。

(撮影=柿島達郎)

――あまり自身の服を着ているイメージがない。「自分が着たいものを作る」という女性デザイナーに多いスタンスとは違うと感じる。

 「人前に出る時にどうして自分の服を着ないの?」って聞かれることが結構ありますが、なんだか恥ずかしいんです。もちろん、自分が着たくないものは一切作っていないし、その時々で自分が女性としてこういうものが着たい、というのは意識します。でも、それが一番では作っていません。

 もともとファッションに興味を持ったのは、幼稚園から高校までずっと制服を着ていて、その反動からです。美大に進んだのは、ファッションだけでなく、デザインやアートなどの文脈も踏まえて表現ができる環境がいいなと考えたから。技術の習得だけでなく、価値観の構築込みでファッションと向き合うようなことがしたかった。家庭科の授業は本当に嫌いだったから、親には「あなたがファッションをやるなんて信じられない」と今も言われます。

(写真=柿島達郎)

《記者メモ》 東京・山の手の生まれで、幼稚園から高校までミッション系の名門女子校育ち。清く朗らかな雰囲気はいかにもお嬢様だが、作る服には時々激しいパッションが見え隠れする。話してみると学究肌というギャップも魅力。(五十君花実)




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