【アフターコロナを見据えて】専門店経営㊥ 関係強めて個性認め合う

2020/07/25 06:27 更新


 兵庫県西宮市のカジュアルセレクトショップのパーマネントエイジは、個人経営の専門店ながら自社サイトでのECを10年以上運営している。実店舗は今も営業時間を短縮中だ。3~5月のEC売り上げは前年同期比でほぼ倍増し「これほど伸びるのか」と林行雄代表は驚く。

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■よく知ればこそ

 緊急事態宣言により、ECという手段を持たず、実店舗の営業自粛を余儀なくされ、収入が断たれた個店は多い。一方、ECで売り上げを急増させた個店もある。売り上げを伸ばした大きな要因の一つは、実店舗の顧客による購買だ。

 店と人をよく知るからこそ、安心して購買できる。外出自粛を強いられても、顧客との強い関係性があれば、対面接客だけに依存する必要がないことを店側も認識した。対面接客は信頼関係の構築に重要だが、それだけに依存する必要はない。

 関係性を強めるためには、店の個性が重要だ。

 個店は路面から商業施設へのテナント出店を目指す傾向が続いた。集客できる立地が魅力的に見え、不特定多数の来店を期待するからだ。しかし、緊急事態宣言で商業施設は休業を強いられ、売り上げを作れずに経営が悪化し、倒産した店もある。

 個性を売るのであれば、集客力がある立地だけが重要なのではない。消費者のニーズは多様だが、不特定多数を意識すれば、コストパフォーマンスに重点が置かれがちだ。しかし、コストばかりを追求し「手間」をかけずに作られた商品は個性も薄い。価格競争に陥れば、勝敗は企業の資本力に左右され、中小・零細の専門店に勝ち目は薄い。

 ファッション商品の購買動機を考えると、実用品の要素は小さい。身に着けることで得られる「幸福感」や「満足感」の比重が高く、こうした商品を提供できれば、客との関係性が強まり、結果として売り上げや利益につながるはずだ。

■多様性で共生

 店の個性は商品が大きな要素を占め、同質化は大敵だ。しかし、バイヤーが仕入れ先の企画や商品特性を理解せず、売れ筋ばかりを求める。メーカーも店の地域や顧客の特性をかつてほど理解していない。これらが同質化の背景にある。双方がコミュニケーション不足から脱し、相互理解を深めることが個性を作り上げるための土壌になるはずだ。パーマネントエイジの林代表は「効率化を求め、利便性や売り場面積拡大で進んできたファッションアパレル業界の転機となった」とコロナ禍がもたらした変化を見る。と同時に、立地だけにとらわれない専門店の可能性も示唆する。

 コロナ禍によって人間同士の接触が抑制され、社会全体にストレスが強まっている。そんな時代だからこそ、店もメーカーも、顧客も、様々なコミュニケーション手段を通じて、互いに個性や多様性を認め合う。これが共生の礎になるという価値観が急速に広がっている。

(繊研新聞本紙20年6月25日付)

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