【パリ=松井孝予通信員】中国発の「シーイン」が、フランス当局から不当表示により過去最大規模の制裁金を科された。仏経済・財務省管轄の競争・消費・不正防止総局(DGCCRF)は7月3日、シーインの販売会社であるインフィニット・スタイル・Eコマース(ISEL)に対し、消費者に誤認を与える価格表示および環境表示を行っていたとして、4000万ユーロの支払いを命じた。
【関連記事】社会が動かした、仏ファストファッション規制法案 環境・産業・消費の課題に対応
DGCCRFは、22年10月~23年8月にかけてシーインの仏語サイト上の数千点におよぶ商品の価格表示を調査。その結果、「値引き前」とされる価格が実際には直前に値上げされたものであったり、30日間の最低価格を基準とするというフランスの規定を無視していたことが判明した。調査対象の57%は値引きがなかった一方、19%は表示より小幅、11%はむしろ値上げであった。
さらに、「温室効果ガスの排出量を25%削減している」とする表現など、同社の環境的取り組みに関する表示についても、根拠となる資料が示されなかった。過剰な低価格モデルが環境負荷を高めているとの批判が高まる中、こうした環境表示への監視は一段と厳しくなっている。
この制裁金は、パリ地検との合意に基づく和解手続きの一環として科されたもので、同種事案としては異例の金額となる。ISEL側は「24年3月の指摘を受け、2カ月以内に是正措置を完了した」とし、「最終価格には影響はなかった」と主張している。
ウルトラファストファッションに対しては、仏国内で規制の動きが強まっており、6月には同業態を対象とする包括的な規制法案が上院で全会一致により可決された。今回の措置はあくまで既存法に基づくものだが、同業態への監視強化や社会的関心の高まりのなかで行われた措置でもある。