アディダスは、キノコを支える根の部分にあたる菌糸体から生まれた新素材「マイロ」をアッパーに使ったコンセプトシューズ「スタンスミスマイロ」を開発した。マイロは、レザーのような見た目と質感を持ちながら、レザーよりも優れた成長効率の再生可能な代替素材。バイオテクノロジー企業、ボルト・スレッドとの共同パートナーシップを通じて開発した。スタンスミスマイロは、22年春夏から販売する。
菌糸体とは、土の中で成長し、糸のように交差する再生可能な繊維状の物質。最先端分野の農業技術を活用し、0.09平方メートル単位から増産を可能にするラボ環境で、菌糸体からマイロは作られ、「成長するのに2週間もかからず、非常に効率的な成長プロセスで作られる」という。
さらにマイロは汎用性が高く、多様な着色や仕上げ加工が可能。アディダスでは同素材を「ゲームチェンジャーとなる最新素材」と見て、「アディダス」を象徴するフットウェアであるスタンスミスで採用、アッパーやかかと部にマイロを使った。ミッドソールは天然素材のラバーで作る。
アディダスは20年、ケリングやルルレモン、ステラ・マッカートニーなどと共に、ボルト・スレッドと一般消費者向けバイオ素材を利用する大規模な共同開発協定を結んだ。マイロもコンソーシアムに加盟するこれら企業で独占的に利用できる。ボルト・スレッドは同プロジェクトを通じて、マイロ素材の商業化の可能性が立証されることに期待を寄せている。
アディダスはプラスチック廃棄物の削減を掲げ、近年サステイナビリティー(持続可能性)活動を強化している。24年までのバージンポリエステルの使用撤廃を決め、20年末の時点で既に50%を超えるリサイクルポリエステルの使用を達成した。
アディダスのエイミー・ジョンズ・ベテラウス未来グローバル担当責任者は、「新素材マイロの登場は、プラチック廃棄物をゼロにするという、全社を挙げた取り組みを大きく前進させる一歩となる。私たちが学ばなければならないのは、自然に抗うのではなく、自然と手を携え、革新的なソリューションを見つけるためにあらゆる努力を注ぎ込み、資源が回復できるよう持続可能なペースで物作りを行う責任があるということだ。地球の生態系と調和するデザインを目指し、また、これからもブランドとして素材のイノベーションの可能性を追求する」とコメントした。