アデライデ/アディッション・アデライデ 長谷川ディレクターに聞く コロナ禍の現状と今後

2020/05/21 06:30 更新


 SNSとECを強化するため、毎日のように対策を練っています。落ち込む暇もないほど忙しい。SNS用の写真を撮るのってすごく時間がかかるんです。情報は今まで以上に丁寧に詳しく載せています。それらを客層ごとのニーズに合わせて差別化して配信しています。

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 インスタグラムは若年層を中心に。世界に向けて発信できるので、店のイメージ作りになる媒体でもあります。コロナ後、インスタを通じた通販の顧客も増えました。40代以上のリアルクローズを求めている顧客には、LINE公式アカウントで非公開で配信しています。情報の多いブログは男性客に好評です。

 SNSの可能性をすごく感じています。私自身もインスタ個人アカウントのダイレクトメールを通じて、日々通販の対応をしています。新規客に高額のファインジュエリーが売れたりもしています。店の強みが接客なので、その強みをプラスして対面で接客しているかのように、動画で配信しています。

 一方、一部の顧客にはデジタルでなく、アナログで対応しています。店が閉まっている間は受注会で予約した商品を直接見ることができなかったので、色やサイズが分かるように商品写真を郵送したり。スタイリングの質問には、スタイリング例の写真をプリントして手紙を添える。昔から行ってきたパーソナル対応が、今生きています。長年の顧客の皆さまの存在がありがたいですね。 

 巣ごもり生活が続くなか、ECで売れているのはTシャツです。アディッション・アデライデのインスタでは、Tシャツ特集を組んだり、ステイホーム特集で10~20%オフのアイテムを出したり。アデライデではニットパンツや家でさらっと着られるワンピースなどに反響がありました。

 特集の内容はスタッフ全員で毎週打ち合わせをして決定します。5~11年勤続のスタッフが多く、各自経験が豊富なので、全員のアイデアを尊重してすぐに実行している。閲覧が多いアイテムを分析して繰り返しアップする事も効果的でした。並大抵のやり方では高額商品をECで売ることは難しいと学びました。

 その作業はとてもアナログです。統計だけに頼っていたら売れなかったし、柔軟じゃないとできなかった。ファストファッションが入ってきて本当に服が売れなくなった時を共に経験したスタッフなので、逆境に強い。経験が今に生きています。

 そのかいあって、2、3月の売り上げは落としませんでした。4月はもちろん落ちましたが、その分ECが徐々に軌道に乗ってきました。

 実店舗は16日からアポイント制で再開しました。店の横に駐車場がある南青山のアデライデは、ドア・ツー・ドアで来店できるので、コンビニやスーパーに行くよりも接触が少ないですし、店では入店時のマスク着用、手の除菌、店内の人数制限などを徹底しています。アデライデは顧客の売り上げが中心のため、受注回収も順調です。一方、アディッションはもう少しフリー客が多いので苦戦していますが、ECに助けられています。

 20年春夏は4月の時点で入荷のコントロールをし始め、納品を昨年の15%ほどに抑えました。売り上げ額は落ちますが、今ある商品をいかに消化するかが重要です。

 20年プレフォールは「ヴェットモン」がもうすぐ入荷するので、店に新作感が加わるし、お客さんを呼びやすくなります。ヴェットモンの社長から「今季はより一層早い納品を目指している。Tシャツ類は3、4月から納品をスタートする」と聞いていました。コロナの影響で後ろ倒しになりましたが、かなり早いスタートです。もはやプレフォールじゃないですね。今着られる物が店頭に増えることはかなり強みです。

 他のプレフォールの入荷は例年5月末からスタートしますが、今回は6月中旬からになりそう。それも随時、店頭に出していきます。セールの時期は他社のお店と相談しながら決めようと思ってます。

 20年秋冬は納品が遅いだけでなく、3月以降に生産に入る予定だったブランドは半分以上納品されないと思います。状況がまだ見えないので、補充についてはまだ考えられませんが、メーカーの在庫で補充したりする可能性はありそうです。

 21年春夏の予算組みはまだですが、ブランド側からプレスプリングは例年の20~50%の内容になりそうとの連絡が多々あります。なので、必然的に減りそうです。でも商況は店を開けられなかった時期が最悪の状況だったとしたら、21年春夏が納品される11月末はもう少し良くなると思う。

 今年に入ってから始めたECは、世界のお客様にも見てもらえる新しい窓口です。それは、うちよりも質の高い写真やスキルをお持ちの海外ECがコンペチターになるということ。いろんなチャネルがあるなかで、アデライデで買いたいと思ってもらえるようなブランディングやオリジナリティーを強化しないといけないと実感しています。

アデライデ/アディッション・アデライデの長谷川左希子ディレクター

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