「何よりも、個人個人がそれぞれの目標に向かって動いたことが良い結果を残した」。アダストリアの福田三千男会長は23年2月期をそう振り返る。連結売上高は前期比20.3%増の約2425億円で過去最高、26年2月期を最終年度とする中期経営計画の目標2800億円に早くも迫る勢いだ。
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「予測よりも順調にいった年」だったが、福田会長、木村治社長ともに「残念だった」ともらすのは、1月に発生した自社サーバーへの不正アクセス。これが影響し「利益が少し足りなかった」が、結果は増収増益で着地した。信頼回復を目指す半面、「我々が新しいシステムを構築できる機会になった」(木村社長)という。自社ECの開発やさらなるセキュリティー強化などに今期は前期実績より約24%多い42億円を充てる。


行動制限が緩和されつつも「生活に対する不安がまだあると思う。(ウィズコロナの)現状はまだわかりきらない」と福田会長。そうしたなかでも「お客様が求めること、もの、サービスを提供」し続けるために「海外の様々な企業、人の動きを確認するのが一歩」だ。
この3年は人々の往来が制限され、ロシアによるウクライナ侵攻など世界が混沌(こんとん)とし、様々な変化があった。足元では訪日外国人需要も徐々に復調し「日本に必要なもの、海外の方に喜んでもらえるもの、結果的に生活が豊かになってくるもの」を考えていく必要を示す。
コスト上昇など事業環境を取り巻く状況は不透明感を増す一方だ。「市場に負けない働き方を今後も推し進める」と木村社長は話す。インフレを背景に社員の生活費の確保が急務であり、一層の成長に意欲的な人材の獲得も肝要。毎年行ってきた社員の賃上げに加えて約10億円を計上し、正社員約4000人と一部管理職を対象に給与を平均6%改善する。今春の新卒社員の初任給は1万円高い25万円。働き方改革では研修を支店主導から現場にシフトして人件費を抑制し、本部では在宅勤務の浸透などで設備費も圧縮。新静岡セノバとの取り組みから広がる商業施設の営業時間短縮にも期待する。