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和歌山ニット産地で糸染めを主力とする吉田染工。90年代にいち早く染色工程の完全自動化を実現し小ロット短納期に対応。14年には横編機を導入し、染色の先にある製品開発にも取り組むなど、価値ある製品を作るための進化を続けてきた。今春からは新たにジャカードニットのオーダーシステム「ソメカラ」をスタート。染工場の枠を超えた取り組みで、若手デザイナーたちのクリエイションにも貢献、繊維産業のこれからの形を作っていく。
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編み機を持つ染工場は国内でも珍しい
社長に就任して今年で22年になります。最初は本業である染色に注力してきましたが、より企業価値を高めていくためにどうしたらいいかと、少しずつ先のことを考えられるようになりました。そうした時に、糸染めが用いられる市場を自ら開拓し、技術力をアピールできるということで、横編機を導入し、「染めから編み出す」製品事業に取り組み始めました。
17年には東京事務所も開設、染色工場ならではの色へのこだわりを強みに、アパレルOEM(相手先ブランドによる生産)などの仕事が増えてきました。4月には島精機製作所の横編機が10台体制となり、中量産にも対応できるほどの規模になっています。10台のうち無縫製ニットの「ホールガーメント」横編機は7台。ジャカードニットで織物のようなテキスタイルが生産できるコンピューター横編機「SRY」は3台となっています。
2月に和歌山で初めて開かれた東京ガールズコレクションにもOEM(相手先ブランドによる生産)の形で参加。プルオーバーやストール、マフラー、バッグ2点を提供しました。素材から製品までを一貫して生産し、地元繊維産業をアピールする場になったと思います。
春にはジャカードニットのオーダーシステム「ソメカラ」をスタートした
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写真やイラストをアップロードすれば、ジャカードニットで、そのデザインのブランケットやクッションカバーを生産、購入できる仕組みで、ウェブサイトを立ち上げました。SRYを活用したもので、BtoC(企業対消費者取引)向けを意識していますが、もちろんBtoB(企業対企業取引)にも対応可能。思い出の品などをきっかけに個人の顧客から広がっていけば、「こういうことをやっている会社がある」と異業種コラボの話も増えるかと思います。雑貨など多彩なアイテムに対応できるので、今後の広がりに期待したいですね。
私たちが製品事業で評価されているのは、「妥協のないクオリティ」を表現できる点。デザイナーは思いを持って色を選んでおり、要望の色に一から染め上げることで、思い描いた製品になるべく近づけることができます。
また、6キロ以下の小ロットについては、自動化プラントではなく、手動で染めており、それが染色現場にとって作業者の技術継承に貢献している部分もあります。
製品事業で顧客が広がりつつある
アパレルブランドはもちろんですが、最近では新進デザイナーやインフルエンサーブランドからの話をいただくケースも増えてきました。新たに参入してくる方は色へのこだわりが強く、そうした方にとっては染めから手掛ける私たちのようなやり方は相性がいい。
また、一見すると無茶な要求もあったりするのですが、業界に染まっていないからこその発想でもあり、私たちの技術力向上にもつながっています。熱融着糸を使い伸縮性を抑えてバッグを作ったり、溶ける糸を使ってあえて穴を開けてみたり、糸の可能性を考えて製品に落とし込む面白さがあります。顧客と話し合いながら、型にはまらずに物作りをしていきたいですね。
ソメカラをきっかけに未来のデザイナーが生まれるかもしれない
ニット製品を作りたくても、どこでどうやっていいかわからないという声も聞きます。最近では弊社に文化学園大学出身の若い女性も入社し、彼女のつながりで感性の近い若手ブランドとの話も増えてきました。物作りの場が国内から消えゆく昨今ですが、若いデザイナーを育てていく上でも実際の物作りの場所が国内にあることは重要ではないでしょうか。
ソメカラで将来を担う彼らのスタートアップ、創業支援に貢献できればと思っています。そして、染色業としての価値をより高めるために、「染めから編み出し」ながらこれからも挑戦していきたいですね。
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吉田染工株式会社
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