【トップインタビュー】株式会社ナンガ 代表取締役社長 横田智之氏(PR)

2024/01/01 00:00 更新


 ダウン製品メーカーのナンガ(滋賀県米原市)は今年、ブランド誕生30周年を迎える。70年代から寝袋を手掛け、94年にヒマラヤ山脈の高峰ナンガ・パルバットに由来する「ナンガ」をブランド名に採用した。2001年に入社した横田智之社長は、さらにダウンジャケットの生産を広げ、海外へも販売を拡大。ブランド30周年を迎え、2023年にも展開しているブランドのグローバル化を加速させる。

 私が入社した当時は売上高が7000万円で寝袋が中心でしたが、今期(24年2月期)売上高は約55億円を予想しています。入社当初は防災用の寝袋やアウトドア専門店向けの寝袋のほか、ダウンジャケットは1型だけ生産していました。元々は近江真綿を使用した産地の布団メーカーとして1941年に創業していますが、もう布団は生産していませんでした。

 当時の工場は十人ぐらい。そこで、私が営業マンとなり、新しい取引先開拓を進めました。しかし、職人気質の父の営業により、嫌われている取引先も少なくなく、新規開拓には苦労しました。当時の寝袋は登山専門店のOEM(相手先ブランドによる生産)が多く、その後には大手スポーツメーカーも主力となりました。

 1996年からは寝袋の品質が良いという口コミが広がり、他社からも寝袋の生産依頼が舞い込みました。その中で、オリジナルブランド「ナンガ」の寝袋も東京で扱ってもらえる店も出てきました。ダウンジャケットは私が入社して二年目から新しい試作を開始し、05年には東京での知名度も上がってきて、アウトドア系ではないアパレルブランド向けのOEM(相手先ブランドによる生産)事業をスタートしました。

ヒマラヤ山脈の高峰ナンガ・パルバットに由来する「ナンガ」

 09年に社長を引き継いだ時は年商3億円ほど。しかし、当時から「ダウンジャケットを着てもらえると暖かく、品質が良く、値ごろだということは消費者に分かってもらえる」という自信がありました。後発メーカーだったので、ある程度コストを切り詰めて、品質を重視していたので、使う人が増えてくれば口コミが当然広がると思っていました。

 当時はOEMが主体でしたが、15年からは“ナンガのリブランド”に着手しました。売上高10億円規模となり、デザイナーを入れ、企画にトレンドを取り入れ、オリジナルブランド主力4品番を転換していきました。それまでは私一人でやっていた仕事を分業化しました。

 アウトドアブランドやアパレルブランドのOEMで十年培った下地があったので、一定のスキームが構築できれば確実に売れるということも分かっていました。12年から開始したアーバンリサーチさんとの商品開発も転機になりました。生産能力が不足してきたので、協力工場も広げました。協力工場は岐阜や県内で、アウターが未経験な工場も多く、1から技術指導を始めました。12年には新社屋も完成しています。この頃から様々なブランドとのダブルネームの商品開発が増えていきます。

 海外の展示会には16年に視察へ行き、17年に米国ソルトレークシティーの「アウトドアショー」に出展しました。そこから、米国や欧州の展示会に毎年のように出展し、海外販路の開拓を進めています。やはり日本だけでは人口減少にあり、温暖化も進んでいますので、規模拡大にはグローバルに広げていくしかありません。

 コロナ禍前からキャンプ市場は話題となっていましたが、コロナ禍で、さらにブームが盛り上がり、昨年からは落ち着いてきました。当社も寝袋は前年の影響を受けていますが、ダウンジャケットやその他アパレルは引き伸びているので、今期(24年2月期)の売上高はほぼ横ばいと見ています。

 引き続き物作りにこだわり、国産の「イブキ」「ミカミ」といったハイエンド商品を開発しながら、海外生産も広げて買いやすい価格帯も提供していく考えです。アウトドアブランドとして、その中で、どう枝葉を伸ばしていくのか楽しみだと思っています。国内にはキャンプブームが去っても好調なアウトドアブランドがあり、海外ではダウンジャケットからラグジュアリーブランドに転身した例もあり、当社もダウン製品を主体としながらアウトドアとファッションを融合させるなど様々な可能性があると思っています。社内では次の20代、30代がバリバリ働ける会社になるように、最近は社員の自主性も重視しています。

 一方、海外市場の拡大は命題です。欧米での市場開拓を先行しており、次のアジア市場も視野に入れています。昨年11月にはニューヨークで初のポップアップショップを開催しました。取引先からは好評でしたが、やはりブランドの知名度不足も実感しました。

 今年のブランド30周年では様々なブランドとの協業商品や県内でのイベントなど話題となる仕掛けを色々と実施したいと思っています。

NYで開催したポップアップショップ

株式会社 ナンガ

〒521- 0223 滋賀県米原市本市場182-1

https://nanga.jp

企画・制作=繊研新聞社業務局



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