22年春夏ニューヨーク・コレクション リアルのショー復活 先駆的な女性たちにふさわしい服

2021/09/14 06:28 更新


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 22年春夏ニューヨーク・コレクションは、デルタ株の広がりに不安を抱えながらリアルショーを復活させた。前の週には隣接するニュージャージー州と合わせて40人以上の死者を出したハリケーン・アイダが到来、ファッションウイーク開幕前日にバイデン大統領がニューヨーク市内の被災地区を訪れる事態となった。「9・11」同時多発テロ事件から20年を迎える今年は、節目の行事も多い。

 何かと深刻なムードが漂う中、まずはコロナ対策だ。会場入り口では、ワクチン接種済み証明の提示が義務付けられている。屋外のショー会場が多いことも、コロナが一因といえる。

〈フィジカル〉

 米国は今年、初の女性副大統領が誕生し、バイデン大統領の就任式では女性たちが力強いメッセージを発信した。ニューヨーク州でも、クオモ知事からセクハラを受けたと声を上げた女性たちの主張が認められ、コロナ対策で華々しい実績を残した同知事が辞任に追い込まれ、後任にホークル氏がニューヨーク初の女性州知事に就任した。女性たちが「トレイルブレイザー」(先駆者)となる状況が、あちこちで起きている。そうした中、ニューヨークのデザイナーたちは、強くたくましく自信にあふれ、果敢に挑戦する女性たちにふさわしい服を生み出している。

 ガブリエラ・ハーストの会場は当初、屋外の予定だったが、雨のため、倉庫のような場所で行われた。ハーストはインスピレーションを得たアートディーラー、へスター・ダイアモンドを「堂々とした先駆的女性」と評した。情熱的で直観力に優れ、知的で才能があり、確固とした価値観をもっているところに引かれたという。その女性のイメージにナバホ、ウルグアイ、ボリビアの手仕事を加えた。

 黒のカシミヤニットのタンクドレスは、カラフルなクロシェの大きなパッチを大胆に留め付けている。ダイアモンド氏が鉱物のコレクターであったことから、鉱物をイメージした色柄をのせたクロシェのドレスやインターシャのポンチョも登場する。シルエットはロング・アンド・リーンと量感たっぷりのテントライン。ソフトテーラーリングのパンツスーツやロングコート、ロングスカートも見せた。最初から最後まで、堂々と力強く、自分に自信をもっている女性像が描かれた。ビートの利いたBGMが、そのムードを一層押し上げた。「欲しいと思ってもらえる美しい服をつくることができて、それと同時に他の人たちを力づけられるということは、おそらく最も満足度の高いプロフェッショナルな経験の一つでしょう」とハースト。

ガブリエラ・ハースト
ガブリエラ・ハースト

 プロエンザ・スクーラーは、ハドソン川沿いに5月にオープンした人工の島、リトルアイランドでショーをした。日没に合わせてスタートしたショーには、縦長のシルエットにボリュームと動きを加えた存在感のある服がずらりと並ぶ。しなやかさと強さを兼ね備えた女性像を代表するシルエットは、ウエストをきゅっと絞り、ウエストからヒップにかけて彫刻的な丸みを描いたライン。ニットあるいはストレッチ素材でシルエットをつくる。裾にフリンジを垂らしたバイクショーツと合わせて、躍動感を加える。ウエストシェイプのチュニックの五分袖に大きなビーズをつなげたフリンジを垂らしたり、ドレスにフリンジを何段も入れたり。ドローストリングでギャザーをたっぷり寄せるなど、機能的なディテールやテクニカル素材も随所に登場する。柄は、グラフィック感覚にデフォルメしてコントラストの強い配色をのせた花とゼブラ柄。色はオレンジ、イエロー、フクシャピンク、ブルーに白黒を合わせた。

プロエンザ・スクーラー
プロエンザ・スクーラー

 昨年LVMHヤングファッションデザイナープライズのファイナリストに選ばれたピーター・ドゥは、7シーズン目にして初のショーを行い、46ルックを見せた。会場は、ブルックリンのグリーンポイントにある波止場。マンハッタンの摩天楼をバックに登場したのは、ロング・アンド・リーンのシルエット。ウエストでアシメトリーにボタン留めしたロングコート、大きな花の刺繍をワンポイントで入れたロングドレスは、ドゥの故郷、ベトナムのアオザイから着想している。ロングコートはキーアイテムで、パンツと組み合わせて縦長のラインを強調する。長いボウを垂らしたブラウス、太ももまで入れた長いスリット、サンバーストプリーツを入れたロングコート、リブニットのロングチュニック、ホールターネックのジャンプスーツと、縦長に見せるバリエーションを豊富に揃えた。

ピーター・ドゥ

 プラバル・グルンはマンハッタンの最南端、バッテリーパークで夜9時半にショーをスタートした。満月を思わせる大きな球形の照明を並べ、ピアノの生演奏の中、ボリュームを強調したフェミニンなドレスとスーツが並ぶ。グルンは昨今のフェミニズム運動を機にフェミニンとは何かを再考し、フェミニンな服のもつ「新しいパワー」を引き出そうとしたという。クラシックなシルエットでも、ボリュームの出し方によってパワフルによみがえらせられるという考えだ。ペプラムジャケットは、サイドのみにギャザーをたっぷり寄せる。量感のあるバルーンシルエットは、袖にもギャザーをたっぷり入れたり、カットアウトを組み合わせたり。ディテールと柄はくるみボタンとループ掛け、大きな花のアップリケ、壁紙調の花柄プリント、ギンガムチェックなど、クラシックな要素をふんだんに入れた。

プラバル・グルン

(ニューヨーク=杉本佳子通信員)

〈デジタル〉

 アディアムは、「アディアムアイランド」をテーマにCGでバーチャルな南の島を作り、メローな雰囲気のトロピカルスタイルを配信した。海に浮かぶ小さな島に淡いピンクのランウェー。そこに軽やかでフェミニンなスタイルのモデルが登場する。Aラインのドレスやセミフレアドレスは小さなフリルをティアード状に飾り、ヘムもトリミング。フレアスカートやショートパンツはTシャツにインして軽快に着こなす。白と黒、ベビーピンクのフラワープリント。南国イメージとはいえ、灼熱(しゃくねつ)の太陽ではなく、柔らかな淡いピンクで全体を包み込んだ。

アディアム

 タダシ・ショージは、100年前の1920年代に思いをはせた。スペイン風邪の恐怖から解放されて活気づいた時代を今と照らし合わせて、優雅なパーティースタイルを提案した。動画の背景に流れるのは古い時代の街角やパーティーシーン。花柄のフレアドレスに身を包んだモデルは、オープンカーに乗り込んで街を行く。膝丈のデイドレスもパフスリーブのエアリードレスも、軽やかで上品。ネックラインや裾には繊細なレースが飾られている。赤い花や、ブルーやグリーンのワンカラーなど、前向きな色柄が多く使われた。

タダシ・ショージ

(青木規子)


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