21~22年秋冬ミラノ・コレクション 鮮やかな色のコントラストとスポーツエッセンスで見せる

2021/03/03 06:28 更新


 21~22年秋冬ミラノ・コレクションは、色柄や素材で独自性を表現するブランドが増えている。鮮やかな色のコントラスト、アースカラーのトーン・オン・トーン、同系色のパッチワークなどで、新しい表情のベーシックなアイテムを作る。キーアイテムは、首元を覆うハイネックトップやパーカトップ、ツータックのハイウエストパンツなど。スポーツ要素がエッセンスになっている。

(小笠原拓郎、青木規子)

【関連記事】21~22年秋冬ミラノ・コレクション シンプルデザインを色柄で変化

 MM6メゾン・マルジェラは、ブランドのオリジンともいえるコンセプチュアルなコレクションを見せた。デジタル映像で見せたショーは、フィナーレからスタートするというもの。しかもモデルが掲げた「FIN」の文字はアンビグラム(逆さ文字)になっている。ショーの映像は一部が逆回しとなるなどトリックがいっぱい。そこに登場する服もギミックが隠されている。コートやGジャンはインサイドアウトのディテール。ブラウスもインサイドアウトで肩パッドがあらわになる。ニットドレスはウエストでトップ部分を折り返してスカートのように着る。しかもフロントトゥバックでタグが前に付いている。ジーンズも革パッチやヒップポケットがフロントに付くように変えられている。そんなトリックアートのような服が不思議な存在感を持つのは、このブランドらしさとプロダクトクオリティーを感じられるから。シアリングのコートやブルゾンも上質な風合い、インサイドアウトのGジャンも裏と表の色のコントラストが利いている。極太の糸で編み込まれた白いケーブルニットも迫力がある。

MM6メゾン・マルジェラ

 スポーツマックスはシャンデリアを飾ったクラシックな舞台で新作を披露した。秋冬はダークで退廃的なムードと構築的なシルエットが入り混じったスタイル。いくつもの側面を持った女性像を描くのが特徴で、ある部分では退廃的な美しさを描き、ある部分ではマスキュリンの構築性を強調し、そして時にアンドロジナスなムードを漂わせる。シャツやニットドレスのスリーブが長く垂れ下がり、パンツの裾も床を引きずるように長いフレアラインとなる。ミリタリージャケットのマスキュリンな強さと透け感たっぷりのニットドレス、パンツの上から重ねたタイトスカートなど、ジェンダーの境を超えて遊ぶ。ジャージードレスの袖やコートのフロント合わせに、アシンメトリーを取り入れて変化を作る。20世紀にアーティストや作家、パフォーマーとして活躍したクロード・カーアンが秋冬のミューズで、自由な女性たちに捧げるオマージュというコレクション。

スポーツマックス

 ジョルジオ・アルマーニはメンズとウィメンズの二つのコレクションをそれぞれデジタル配信した。無人のショーの舞台となったのは、ゴリラの彫刻が置かれた四角い会場。そこにアルマーニらしいリラックスしたエレガンスが広がった。ウィメンズのテーマは「Nocturnal」(夜行性)。水のような色調、ターコイズ、淡いパープルなど穏やかでロマンティックな色使いが特徴となる。ふんわりしたシャツやウエストシェイプが利いたコートのほか、水を感じさせるプリントのドレスがキーアイテム。縦のラインを強調したシルエットで見せる。着丈の長いブレザーや独特の膨らみをもったフォルムのパンツが新たに登場した。きらめく輝きのビジュー刺繍のロングドレスも。一方、メンズのテーマは「Passage」(それぞれの道)。その人の微妙なニュアンスや通ってきた道を、スタイリングによって表現するという考え方だ。かつて、アルマーニのスタイルが、映画の中の人物がクローゼットを前に服を選ぶシーンによって有名になったことは偶然ではないという。今季のコレクションはまさに、「ワードローブの構築」。着る人一人ひとりが自分の思い通りに組み合わせ、コーディネートし、自分自身を表現できる服というコンセプトで見せた。

ジョルジオ・アルマーニ
ジョルジオ・アルマーニ

 ミラノ・コレクションのスケジュールで目を引いたのはマルニだった。ブランド名の後には、午前の部は朝食、午後の部は昼食と記されていた。マルニおすすめのレシピでも紹介するのかと、配信の前から興味が膨らむ。デジタル配信だと、リアルショーのように内装や音楽などで気分を高めていくことができない。それを補うさりげないアイデアだ。舞台は、温かい光に包まれた日常を過ごす家。座り心地の良さそうなソファや食事の支度がセッティングされたテーブルに、友人知人が集っている。キッチンでは朝ごはんのスープがことこと。よく見ると靴が煮込まれている。くすっと笑わせるユーモアと、淡い色と花々によるロマンティックなムードが混在する。新作も二面性が特徴だ。クラシックとカジュアルを組み合わせた日常スタイルが揃った。セーターやプルオーバーはドレッシーに胸元を大きく開け、ダウンは上品なケープ型。合わせるマーメイドスカートは手編み風のニットで仕立てた。マルニ特有の丸みのあるクラシカルなシルエットをデイリーウェアに落とし込んでいる。着る女性の年齢もサイズもいろいろ。テーブルを囲んでわいわい笑いながら、食事をしたり、お茶を飲んだり。食事という生活における重要な要素を題材にして、マルニのライフスタイルを表現した。トム・ビンズと協業したチャームやジュエリーが多く揃った。

マルニ

 エミリオ・プッチの映像には、スイートな色の世界が広がった。淡いピンクを背景に、クリームやハニーイエロー、オレンジ。明るく柔らかい色柄をすっきりとクリーンに表現した。キーアイテムは、体にぴったりと吸い付く全身タイツ状のボディースーツ。白地にリボン柄やマーブル柄といった総柄のボディースーツに、シンプルなダブルフェイスのコートやタイトスカート、キルティングのボンバージャケットを組み合わせていく。ブランドのシグネチャーを第2の皮膚のように身にまとい、重ねる服は程良いフォルムのスタンダードに徹した。装飾を控えて、ブランドのイメージを凝縮している。シンプルなスタイルながら、細く長いシルエットは未来的で、伸縮素材はスポーツのエッセンスも感じさせる。

エミリオ・プッチ

 トッズの動画は、大理石の上でしなやかに過ごす女性のしぐさや動きを追って、フォルムやディテールをクローズアップした。ニットパンツに重ねたトレンチコートは、首元のラッフルがケープのように肩に流れる。シャツの後ろ身頃の裾にはとろんとした質感のリボン、シャツドレスにはもこもこと大きなシープスキンのカプリーヌ。硬質でモダンなインテリアの中で、柔らかな質感やフォルムが際立つ。ブルーとブラウン、ブラウンとピンクやイエローといった色合わせも優しい。どことなく70年代のムードが漂っている。ボヘミアンスタイルのバッグが目を引いた。

トッズ

 エトロが無観客のランウェーショーで見せたのは、エキゾチックな色柄をパッチワークのように組み合わせたパンツスタイル。芸術家がくつろぐ部屋着、スポーティーなストリートウェア、ミリタリー要素を取り入れたヒッピースタイルなどが混在する。イメージソースは、ロシアのバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフとアメリカのギタリスト、ジミ・ヘンドリックスが持つ自由奔放なスタイル。創業時から持つ自由の精神を深掘りしたという。タートルネックやシャツにVネックセーターを重ねて、全てをワイドパンツのウエストにイン。ジャカードニットにパッチワークパンツ、キルティングのアノラックなど同系色の柄を重ねていく。長めのアウターとニーハイブーツの組み合わせも。

エトロ

エンポリオ・アルマーニ

 黒いステージに並んだのは、ブランド名のカラフルなネオンサイン。80年代イメージ満載の会場がしつらえられた。新作もパンチのある鮮やかなカラーパレット。ビビッドピンクのセーターにハイウエストパンツ、鮮やかなブルーのロングコートにピンクのコサージュ。当時を思わせるポップなカラーコントラストが、シンプルな服やクラシカルなルックに躍動感を添える。

エンポリオ・アルマーニ

モスキーノ

 コンセプトは「ショーの中のショーの中のショーの中の」。ハリウッド初期の時代にタイムスリップして、ノスタルジックなレビューの世界を楽しく見せた。夜の街ではダンディーなピンストライプのスーツ、草原では空柄のシャツと牛柄のボリュームスカート、ジャングルではウエストをぎゅっとシェイプしたサファリジャケット。シーンごとにテイストが変化していく。

モスキーノ

アンテプリマ

 丘の上を舞台に、大地になじむアースカラーと滑らかなフォルムのルックが揃った。シャツには体を心地よく包む込むニットベストやケープ、ショートジャケットにはワイドパンツ。ベージュやオリーブに、イエローやバーガンディ。白いタートルネックが都会的な感じをプラスする。自然とデジタルなど対局にあるもののつながりを考えたという。

アンテプリマ


この記事に関連する記事