【ニュース2021③】乱れるサプライチェーン リスク分散し適地生産の柔軟性を

2021/12/30 06:30 更新


 コロナ禍やミャンマーでの政変などにより整備されてきたはずのサプライチェーン(供給網)が乱れた1年だった。そこに様々なコストアップや円安が重なり、アパレル製品輸入を中心に収益確保が難しい状況が続く。

強まる「中国離れ」

 衣類輸入動向からサプライチェーンの乱れによる変化が見てとれる。コロナ禍前までは中国から東南アジアなどに生産地移転が進んでいたが今年は一変した。1~10月の衣類輸入(速報)では、中国が前年比7%増(数量ベース)、バングラデシュ21%増、カンボジア16%増、インドが11%増と伸びる一方で、ベトナムは12%減、インドネシア11%減、ミャンマーが26%減と大きく落ち込む。

 感染拡大が続いた東南アジアから比較的感染を抑え込んでいる中国への生産回帰が見られるが、今後も続くかは不透明だ。中国での人件費の高騰やワーカーの確保が難しくなっていることからコロナ禍が収まれば、「ベトナムを始めとする東南アジアやバングラデシュシフトの大きな流れは止められない」との見方が強い。欧米ブランド中心に「中国以外で生産したい」という要望もある。米中貿易摩擦や新疆綿問題など、政治と経済が密接に結びついており、「中国離れ、中国外し」の動きはますます強まりそうだ。国軍が軍事クーデターで政権を奪ったミャンマーについても、「人権面から考えてミャンマーでの生産は控えたい」との声は日本企業からも出ている。

様々なリスクに対応できるバランスの取れた生産地施策が必要になっている(イメージ)

徐々に戻るベトナム

 「脱中国の受け皿」をベトナムとコスト競争力の高いバングラデシュが争う様相だ。7月以降のロックダウン(都市封鎖)で大きなダメージを負ったベトナムだが、徐々に生産が戻りつつあり、「3月までのオーダーはいっぱい」との声を聞く機会が増えた。ただワーカーは戻りきっておらず、人員不足が続く。そうした中、生地、縫製問わず工場の新設や増強など生産拡大を見込んだ動きが目立ってきた。オミクロン株の出現で見通しが難しいが、欧米ブランドからの引き合いが強まっているためだ。

 発注量が多い欧米顧客を優先し、日本向けが敬遠される場面もでてきそうだ。そのため縫製工場との関係性の強化、蝶理のようにスミテックス・インターナショナルを買収して自社工場を確保したりと生産背景を整備する動きが顕著になっている。

 一方で日本向けは、販売単位がさらに小さくなり、売れ筋が読めない中で、「小ロット、QRの面で中国生産が軸」なのは変わらない。また縮小が続く国内生産も「無駄な物作りをしない観点からも今後武器になる」と見直す向きもある。

 コロナ禍が終息しても様々なカントリーリスクは存在する。ある程度絞り込んだ上で生産地を分散し、その組み合わせで最適なバランスを取れるような戦略、リスクマネジメント、柔軟性が求められている。

(繊研新聞本紙21年12月21日付)



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