【パリ=小笠原拓郎、青木規子】20~21年秋冬パリ・コレクションには、様々な要素をミックスしたスタイルが広がった。80年代のロンドンや日本、マスキュリンとフェミニン、マットな色と光沢、透け感と重厚な素材。ミックスしながらも装飾を盛り込んだようには見せず、どこか涼しげで軽やかに見えるのが特徴だ。
(写真=大原広和)
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メゾン・マルジェラは1月のオートクチュールで見せた未完成の服、〝現代のブルジョア〟の概念を発展させた。ペールブルー、イエロー、オレンジ、柔らかな色のオーガンディの透け感と重厚なメルトンが解体され再構築されながら一つのルックに共存する。テーラードコートは襟と身頃の一部分がフロントに垂れ下がり、オーガンディはドット柄がわずかに浮かび上がる。コートはアシンメトリーに半身だけがボディーに寄り添い、芯地がその構造をむき出しにする。解体されてフロントとバックだけになったジャケットは、2次元の平面のデザインにも見える。
襟元からギャザーを寄せて片袖だけを覆うワンスリーブパーツはクチュールでも見られたデザインだが、実は秋冬のプレタポルテのトレンドであることに気付かされる。トワルにシーチングとともに布地を当てて、その途中で作るのを止めたかのようなドレス、しつけ糸をアクセントにしたジャケットもある。
その作りかけの服は、リサイクルやアップサイクルの考え方も反映している。もともとマルタン・マルジェラの物作りは「何年のどこで作られたジャケット」など、特定の時代のアイテムをベースにサンプルの型出しをする手法が取り入れられていた。そういう意味ではアップサイクリングは、まさにメゾンのコードと言えなくもない。とはいえ、大切なのはそのクリエイション。未完成の持つ力をジョン・ガリアーノらしい卓越したセンスでまとめて、新しい足袋シューズの「リーボック」のポンプフューリーとともに軽やかに見せた。
ドリス・ヴァン・ノッテンは1月のメンズコレクションに続いて、グラムロックや80年代のロックシーンを思わせる色柄ミックスのロマンティックスタイルを見せた。チェック柄のバイカージャケットにフェザー刺繍のスカート、プリントベルベットのパンツやドレス、グリーンのスパンコールドレス、フェイクファーストール、重厚なブロケードドレス、シアリングのB3ジャケット。マスキュリンとフェミニン、マットな色とキラキラの光沢をミックスしながら艶やかでエキセントリックなラインを描く。
モデルたちはブルーやグリーン、レッドなどを部分的にカラーリングしたヘアにきりりと強いアイライン。セルジュ・ルタンスによるメイクは、まさに80年代のイメージ。カムデン・パレスやマッド・クラブといった80年代のロンドンのクラブシーンを背景にしたスタイルが、違和感なく取り入れられる。様々な要素をミックスしながら、それが喧噪(けんそう)ではなく、涼やかな中に収められる。それがドリス・ヴァン・ノッテンのマジック。
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